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オーバーツーリズム 寺社の「観光資源」化に警戒

2020年2月5日 10時24分

最近まで海外観光客誘致になりふり構わず躍起であるように見えた行政の風向きが、ほんの少しばかり変わってきた。観光都市・京都の門川大作市長が先頃、「市民の安心・安全や、地域文化の継承を重要視しない宿泊施設」の建設を「お断りする」と発表したのは象徴的だ。

「オーバーツーリズム」という言葉がある。観光公害などと訳されるが、観光客を誘致しながら、適切な受け入れ態勢の整備が追い付いていないということだ。インバウンド消費拡大は安倍晋三政権の経済成長戦略の柱だが、コロナウイルス問題、外交的緊張などでインバウンド依存のリスクが語られる。公共交通機関の混雑や、日本人から見たマナー違反も指摘され、観光地経営の矛盾が露呈している。観光庁は一昨年、「持続可能な観光推進本部」を設けて対策に乗り出した。

言うまでもなく、寺社と観光は歴史的に深いつながりがある。伊勢参りや各地の霊場巡拝などには宗教的意味だけでなく、観光的要素も強く、伊勢や出雲、富士、立山などの御師は旅行業者の先駆である。近年、聖地の巡礼にも新たな現代的要素が加わり、巡礼ツーリズムなどの宗教学的研究も盛んになってきた。

行政が経済界と共に観光客誘致を優先施策として打ち出すと、寺院、神社などもそれぞれの地域の「観光戦略」の中に改めて組み込まれる。歴史的に巡礼の聖地ではなかった寺社でも、社会の一員として地域振興に協力し、新たにツーリズムの枠内で役割を期待されることもある。比較的地味だった寺院が紅葉の名所として注目され、ライトアップで観光客を集めるまでに変身した例も見てきた。

ただ、観光と歴史的に深い関係にあるにせよ、寺社が宗教的な主体性を見失うことには深い危惧を覚える。思い出すのは、15年ほど前にスタートした京都商工会議所主催「京都・観光文化検定」の当初の公式テキストブックに「京都の人的観光資源」の例として「総本山の僧侶」が挙げられていたことだ。なるほど、そう見ているのか、と一驚したものである。

「観光資源」という割り切り方には、さすがに多くの宗教者はついていけないだろうが、気が付かないうちに観光産業の論理に支配され、オーバーツーリズムの弊害に巻き込まれている可能性も考えてみた方がいいかもしれない。

地域の活性化も重要だが、寺社はまず第一に信仰の場である。消費される「観光資源」と化し、自らの本質を見失わないよう警戒してほしいと思う。

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