PR
購読試読
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
宗教文化講座2020
PR
宗教文化講座2020 墨跡つき仏像カレンダー2020

混濁の世に輝く 全盲ろう者の言葉

2020年3月11日 10時36分

東京大教授で全盲ろう者の福島智さん(57)は著書『ぼくの命は言葉とともにある』に、18歳で光と音を失った過酷な運命を「宇宙空間に一人漂っているような」と表現し、その「暗黒の真空」から「私を解放してくれたものが『言葉』であり、私の魂に命を吹き込んでくれたのも『言葉』だった」と記す。

外界との言葉のやりとり=コミュニケーションは、点字とお母さんが考案してくれた指点字を「蜘蛛の糸」のように頼るしかない。他人には想像し難い困難を生きてきたからこそ分かる、一つ一つの言葉の重みである。

福島さんはまた、言葉は背景や文脈があって初めて意味が生じるが、さらに行動が伴わなければ力にはならない、つまり言葉は行動と意味の二重構造になっていることを忘れてはいけないと説く。人間は誰でもすぐ博愛主義者になるが、そばにいる人には案外冷淡なことが多いから、と。キリスト教の根本原理である「隣人愛」や仏教の「七仏通誡の偈」にどこか通じる思考だが、福島さんにとって点字と指点字で読み取ってきた言葉は「生きる証としての具体的な力」を持ったものなのである。

翻って健常者の世界はどうか。日夜、膨大な情報が行き交う中、テレビではお笑い芸人たちが意味もない言葉の瞬間芸を連発して笑いを取るような場面が日常的な光景だ。インターネットではSNSや時間差なく文字による会話を楽しむチャット、メールなどで言葉があふれ返る。匿名で他者への侮蔑や憎悪を表す感情的な言葉が拡散されることも少なくない。

情報収集を映像メディアやネットに依存するほど人は自分の頭で考えなくなるという指摘は以前からあった。思慮の浅い言葉が軽くなるのは避けられず、総じて人の心を揺さぶるような力強い言葉に触れることが少ない世相である。

言葉が力を失った社会は知識、学問や倫理的、宗教的な権威への尊敬の念が薄くなるとされるが、とりわけ為政者が発する言葉の軽さは政治への冷笑主義を醸成し、罪は深い。近年、国会質問で政権側の責任感に乏しく誠意に欠ける答弁は国民の政治離れを加速し、民主主義を危うくしかねない。

もう一つの懸念はネット上で仲間同士の疑似コミュニティーに閉じこもっていると、分断・孤立化を深めることだ。孤立感を癒やすため、人は社会を覆う「空気」に絆を求め、安易に同調しやすい。

そんな時代の潮流だからこそ、言葉を「生きる証」という福島さんの語りは重く響く。濃い闇に輝きを増す小さな光のようである。

修行の「厳しさ」 現代社会における価値4月1日

曹洞宗では、1965年に2481人だった10代の宗侶人数が2015年には850人に減少したという(本紙3月4日付)。少子化だけでは説明できない。原因は単純ではないだろうが…

地下鉄サリン事件25年 語り継ぐべきものの選択3月27日

新型コロナウイルスの影響で、地下鉄サリン事件から四半世紀を経た関連の催しも中止となった。事件の風化が強まるのではないかと危機感を持つ人も少なくない。 1990年代後半以降…

“復興五輪”の下で 原発事故への怒りやまず3月25日

東京電力福島第1原発の事故によって故郷を奪われ、遠方に避難を余儀なくされた被害者たちが各地で起こした損害賠償訴訟では、東電の責任を指弾する判決が相次ぎ、先日は仙台高裁で二…

新型コロナ、宗門系大学に影響広がる 入学式中止相次ぐ

ニュース4月1日
新型コロナウイルス感染防止のため窓を開放して行われた定時宗会

来年の聖人降誕慶讃、祠堂法要と併修 法華宗陣門流

ニュース4月1日
昨年10月に新築オープンしたホテル本能寺

新型コロナ影響なんの 昨年改装のホテル本能寺

ニュース3月31日
このエントリーをはてなブックマークに追加