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助かる命の選別 コロナで露呈した倫理問題

2020年4月17日 14時54分

世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス。感染爆発により医療崩壊が起こる中、出現しているのが生命倫理の問題だ。

イタリアやスペインでは、人工呼吸器の不足から高齢者の治療が後回しにされる事態が起きている。治療で命が助かる患者は主に若年層だから、というわけだ。また、アメリカでは、黒人やヒスパニックの感染拡大が進み、死亡者の割合は黒人が抜きんでて高い。シカゴの場合、黒人は住民の3割なのに、新型コロナウイルスによる死亡者は市民全体の7割にも上る。元々、医療保険制度が不十分なところに、貧困で持病を持つ割合が黒人に多いからである。

これに関連して、人々の間でモラルハザード(道徳崩壊)も生じている。人工呼吸器からマスクや消毒液に至るまで、世界各国で取り沙汰されている買い占め騒動がまさにそれである。希少な医療機器も一般的な衛生用品も、金や権力のある所に集中してしまう。医療資源をどう配分するかという問題は、しばしば生命倫理の思考実験として議論されるものだが、それが今や強い者勝ちという現実の問題として表面化したのである。

しかし、それは裏を返せば、高齢者、貧困者、マイノリティーといった社会的弱者に一気にしわ寄せが来ているということにほかならない。平常時の医療アクセスにおいて潜在的にあった社会的格差が、今回のコロナ疫災によって図らずも露呈されたと言ってよいのではないか。生命倫理はそもそも社会倫理の一環を成すものである。

思考実験と現実の問題が違うのは、現実社会ではたとえ選択肢がないような場合でも、自らの創意工夫により選択肢を発見、もしくは開発できるところにある。緊急時には、試行錯誤を重ねつつ、痛み分けや助け合いが可能である。例えば、既存の医療体制を維持するために、無症状や軽症の感染者は自宅待機に努めることで、痛み分けの実践ができる。また、買い占め問題に対しては、政府の強制介入ばかりでなく、高齢者や身障者が優先購入できる時間帯を設定したスーパーなど、民間レベルの助け合いも現れた。

コロナ疫災もいつか必ず終息する。事態が落ち着くまで、こうした緊急の助け合いを続け、その精神と行動を社会に定着させることが望まれる。その精神的な先導役は宗教者である。特に仏教においては、慈悲喜捨の四無量心が教えられている。未曽有の時代状況の下、それぞれに創意工夫を凝らした、この教えの実践が今こそ求められているのである。

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