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人類史的な課題 コロナ禍で崩れるモラル

2020年6月10日 15時57分

ある全国紙の健康川柳欄に載った作品「コロナから色んなものが見えてくる」が示唆するように、新型コロナ禍は人の世と心に潜む様々な弱点をあぶり出した。見えないものへの恐怖は人の心を翻弄し、時に社会を危うくする。救いは医療だが、一時は「医療崩壊」という言葉を聞かない日がなかった。健康川柳の作者の視界にも医療不安が中心にあるはずだ。

ネット上では大阪大招聘教授の現役医師が高齢者向けに作った「集中治療を譲る意志カード」が話題になった。カードには「(コロナ感染で)人工呼吸器や人工肺などの高度治療を受けている時に機器が不足した場合には、私は若い人に高度医療を譲ります」とあり、自分で意思を伝えられなくなった際に使う。重症化した時、人工呼吸器を外すのは死を意味し、医師に「命を選別する」負担をかけさせないため考えたのだという。

脳死論争をほうふつさせるが、今回の場合、若者を救う自己犠牲は尊いものの安易な「適者生存」にすり替えられないか危ぶむ。ようやく築いた高齢者や障害者ら弱者が尊重される社会の倫理が医療体制の都合で崩れていく。

流行の「自粛警察」という言葉が象徴するが、心の許容範囲が急速に縮む時代潮流の下、その恐れを一笑に付せない気がするのである。先進諸国より少ないという集中治療室や人工呼吸器、スタッフ不足解消の努力が先でなくてはなるまい。

医療崩壊は、医療関係者や介護職員らが感染し、治療やケアをする人材が欠ける状況になればさらに深刻だ。だが、日本は他国より早く1月半ばに中国からの感染が確認されたのに、すぐ手配できた医療用の高機能マスクや防護服の調達が遅かった。このため医療の現場ではごみ袋や雨がっぱで体を保護し、クリアファイルで顔を覆って急場をしのいだ局面もあったようだ。第2波の感染も想定される中、適切な検証が求められる。

もう一つ、感染者が親族に看取られることなく死に、そのまま火葬される事態を社会は経験した。死者に付き添うのは人の義務という人類学の視点からの指摘もあるが、仕方なかったとはいえ私たちはその義務を放棄した。それが今後の死生観や葬儀の在り方に何らかの影響を残さないだろうか。

新型コロナ禍は世界でまだ進行中であり、その制圧は人類史的な課題だ。死者数で日本は欧米より桁違いに少ないが、人口対比ではアジア諸国で多い方に属する。安倍晋三首相は「日本モデルの力を示した」と誇るが、そんな次元の問題に矮小化してはいけない。

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