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歴史無視の危険性 差別はいつでも舞い戻る

2020年6月19日 14時00分

米国のミネソタ州ミネアポリスで5月25日に、黒人男性が白人の警察官に9分近く首を押さえ付けられ死亡した事件で、米国各地に黒人差別に憤るデモが起こった。

これに対しトランプ大統領は事態の鎮静に軍の投入も辞さない姿勢を示したが、それには軍のトップさえ反対を表明した。トランプ大統領はこれまでにも人種差別や宗教差別を助長するような発言があって、共和党内からさえも批判が生まれるようになっている。

政治家の差別を助長するような発言は、米国に限らず多くの国に見られる。日本も例外ではない。日本では差別的発言は政治家をはじめ言論人でも日常的になされている。それに対する社会の批判がさほど厳しくないのが気になる。

米国では19世紀半ばまで奴隷制度が続いたので、黒人差別が非常に根深いものになるのは歴史的に避け難い面がある。日本の場合は、特に東アジアの国々との複雑な関係が、差別問題の背後に存在する。人種や民族、ジェンダーに関する差別的発言はヘイトスピーチにつながる。特に見逃せないのは、しばしば過去の歴史を捏造するようなやり方の横行である。

最近の脳神経科学の研究では、個人の記憶が容易に書き換えられることが明らかにされている。10年ほど前、イスラエルのワイツマン科学研究所で行われた興味深い実験がある。被験者は約45分の動画を見せられ、3日後覚えていることをチェックさせられる。例えばある登場人物の服は赤だったと書く。実験者がわざとほかの4人は白と回答したと示すと、白に回答を変える被験者が約7割いた。4人の回答はうそと知らされた後も、白と回答した人、つまり記憶を書き換えた人が半数ほどいた。

社会的記憶は個人の記憶の集合以上の独自の性格を持つ。その意図的改竄の影響は見逃せない。歴史上の出来事、それも文字資料が豊富にあるような出来事について、多くの研究者の合意を無視する政治家や言論人が、ごく一部だが跋扈するようになっている。

関東大震災の時、デマにより多くの朝鮮人が虐殺された事実を否定する政治家もいる。戦時中に生じたアジア各地での様々な性被害をまるでなかったかのように論じる言論人もいる。

これらを放置すると、やがて社会的記憶として一定の力を持ち、突然それが主流になってしまうこともあり得る。「うそも百回言えば本当になる」は、社会現象としてはうそではない。歴史無視に基づいた差別的な言説には、絶えず批判を積み重ねることが重要である。

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