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監視と排除の懸念 IT普及による光と影

2020年7月17日 09時57分

インターネットによる会合や情報交換、テレワークといったITの活用が加速度的に広がる。引き金となった新型コロナウイルス禍が収束してもこれは続くだろう。だがこのような情報通信技術の様々な分野への拡張は両刃の剣。スマホの位置情報を利用した繁華街の人出状況の分析を見ても分かるように、半面では個人情報の監視強化にもつながりかねない。

ある人がどの感染症に対する抗体を持っているかを示す「デジタル健康パスポート」の携行が将来、常識になる可能性があると米国の未来学者が指摘していることを全国紙が伝えていた。この学者は、コロナ危機を契機にプライバシー保護の基準が大きく後退するとみており、今後いろんな施設や公共交通機関の入り口で体温、心拍数、呼吸数や血中酸素濃度などのデータ提示を余儀なくされるような“健康監視社会”が到来するとの見方を示しているという。

医院を訪問することなく診察や投薬を受けることができるリモート医療が既に導入されているのを考えると、あながち杞憂でもないかもしれない。しかも、収集された個人医療情報が漏えいしたり転用されたりする危険性は常にある。現に先般、愛知県がウイルスに感染した人々の情報を、感染者同士の関係や職業まで含めて県のサイトに誤って掲載した。

監視は排除と表裏一体だ。元々このような非常時に“異質なもの”を排除する風土がこの社会には昔からある。今回も、小さな集落で感染者が確認されたらしいといううわさで、「誰が」とムラを挙げての詮索が広まったケースが伝わる。毎年この時期の休日に農作業の手伝いがてら訪問する農村の友人からは「都会者が来たというだけで、村で何を言われるか分からない」と断りが来た。村では都市にいる息子たちが田植えに帰省することさえ相互監視の中ではばかられたという。

そんな監視と排除はITによって格段に危険度、深刻度を増す。学生が集団感染した大学はネット上で誹謗中傷の嵐にさらされ、揚げ句に脅迫まで相次いだ。「フェイク情報」の実害も枚挙にいとまがなく、食品会社の社長が感染したという全く虚偽の情報をネットで拡散され、商売が立ち行かなくなったという実例も報道された。

宗教者には、個々のいのちの重みを説くことで社会のこのような暴走に歯止めをかける役割があるだろう。かつてハンセン病に対して全国的に「無癩県運動」が繰り広げられた際、地域の事情をよく知る寺院が患者発見と強制隔離に協力したという暗い歴史もある。

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