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愛国心の悪用 共生に逆らう動き警戒を

2020年7月29日 10時47分

モスクワ郊外に完成したロシア正教会の「ロシア軍大聖堂」が、6月23日に報道陣に公開された。第2次世界大戦での旧ソ連の対ドイツ戦勝75周年を記念し、祖国防衛に尽力した先人たちをたたえるために建立されたという。設計にも戦勝にちなんだ数字が用いられている。主聖堂の高さは96メートルだが、鐘楼の高さは75周年にちなみ75メートルである。円屋根の直径は終戦の年に合わせて19・45メートルである。

プーチン大統領は大聖堂完成を愛国心の喚起につなげている。社会主義の国であるが、宗教が持つ心理的・社会的機能を政治に利用するという意図が明らかである。

日本は第2次世界大戦で戦闘員、民間人合わせて300万人を超す死者を出した。同じく旧ソ連は2700万人の死者を出したとされる。特にドイツとの戦いは熾烈であったので、戦勝記念に特別の思いを抱く人がいると考えられる。

そうした過去の悲劇を今後の国際関係にどう教訓として生かすかは、政治家だけでなく、それぞれの国民全てに関わる重大な問題である。ところが、過去の戦闘の記憶を現在の国際関係を悪化させるような方向に用いる言説がしばしば見いだされ、宗教が利用されることさえある。残念なことに、そのような動きは日本にもある。

グローバル化がいわれて久しいのに、政治的指導者がことさら愛国心を強調する例が世界各地で見受けられる。むろん愛国心自体は批判されるべきことではない。だが、政治家は国内問題から国民の目をそらすために仮想敵を設定する手法をよく用いる。そうした政治家にすり寄る言論人もいる。

実際には多くの人が国外の人たちと互恵的関係を築いている。愛国心を強調せずとも、ほかの国々との文化的交流が自国のためにもなるように、といった配慮は自然となされている。20世紀後半には宗教界では宗教や国家、民族の違いを超えた共生の重要性を説く傾向が広まり、宗教が合同で行事・イベントを主催する例が増えた。日本でも世界宗教者平和会議(WCRP)への連携があり、比叡山宗教サミットが開かれている。

しかし、ごく一部だが日本を過度に美化して、いたずらに愛国心をあおり、近隣諸国への憎悪を募らせることに加担するかのような言説が宗教界にもある。新型コロナウイルス問題さえ、そうした利用の仕方がされる場合が見受けられる。宗教協力や連帯、共生を重視する人たちは、自分たちの目指すところとは逆向きの動きに警戒しなければなるまい。具体的な対処法も考えるべき段階である。

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