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「武装せる中立」 平和国家に真の平和の理念を

2020年8月7日 10時15分

キルケゴールの遺稿に「武装せる中立」という小編がある。

当時のデンマークでは、誰もが生まれた時からキリスト者と見なされ、そのことに何の疑いも持たれなかった。なぜならキリスト教がデンマークの国教であり、デンマーク人であることはそのままキリスト者であることにほかならなかったからである。

キルケゴールは、そのようなキリスト教界に、徹底した理想的キリスト教、つまり新約聖書のキリスト教を突き付けた。この理想像からこそ、自らの信仰の在り方をも含め、キリスト教界全体が厳しく問い直されなければならない。“武装せる中立”とは、キリスト教の真理を高く掲げつつ、キリスト教界に対して中立的な立場に立つことを意味する。

さて今年は戦後75年の節目の年である。戦後生まれの日本人は総人口の83%をすでに超えた。この間、日本は平和憲法下、一度たりとも他国に武力行使をしてはいない。生まれた時からこうした国に生きていると、つい誰もが「自分たちは平和を愛する人間だ」と思い込んでしまうのではないだろうか。

だからといって、日本が平和国家であり日本人であることがそのまま平和主義者であるというわけではない。実際、自衛隊の海外派遣や集団的自衛権の容認など、なし崩し的に現実主義への譲歩が進みつつある。そうしたことが、真の平和の理想から厳しく問い直されなければならないのである。

真の平和の理想とは何か。それは神仏の教える平和にほかならない。宗教者なら誰もがそのように答えるだろう。平和の理想を高く掲げ、現実の平和に対して距離を取ること、これが平和問題における“武装せる中立”の姿勢だといえるのではないだろうか。

日本の宗教者は、反戦・反核運動などの平和運動を展開してきた。かつての戦争協力を反省し、懺悔と慰霊の灯をも掲げてきた。それは誠に尊い運動であり実践である。先人たちの足跡を継承しつつ、我々はいま一度、自らの信じる宗教的平和の理念の光から、自らをも含めた日本人の平和観を照射してみてはどうだろうか。周辺国との緊張関係など、昨今の日本を取り巻く現状は厳しいが、宗教者は常に理想の旗印を掲げていかなければならない。それは必ず心ある人々の心魂に届くはずだ。

今年、間もなく75回目の終戦の日を迎える。我々は8月15日を75年間、終戦の日として守り続けてきた。全ての日本人の世代には、この日を永遠に終戦の日とする使命が託されている。

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