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コロナと心の闇 神仏の光で照らし出す

2020年9月4日 11時47分

近年、推理小説の道具立ては著しく変化している。一昔前は、固定電話しかなく、移動も主に鉄道、犯人の遺留物で分かるのは血液型だけだった。今では携帯電話やスマートフォン、モータリゼーションの進展、随所に設置された防犯カメラ、個人をほぼ完全に特定できるDNA鑑定など、進歩は驚異的だ。これらを駆使しないと現代の本格推理を書くことができない。昭和30年代の清張ミステリーは、時に江戸時代の捕物帳のようにも思えてしまう。

ただし、それはあくまでもトリックに関してであって、犯罪の動機はそうではない。人間の心の闇は今も昔も変わらない。人生の歯車が何かのきっかけで狂い、日常生活に深い裂け目ができたとき、人は犯罪に走ってしまうことがある。松本清張は、社会派推理小説の分野で人世の機微を巧みに描いた。

もちろん現実には、事件はまれである。心の闇を抱えていたとしても、大半の人々は隠忍自重するからだ。また人の目、世間の目が光っているし、たとえ他人に見られなくても、お天道様が自分を見ているという意識がある。これが内なる抑止効果を果たしているのである。その一方で、自分自身もまた人々に対して、他人のまなざしを持つ。このまなざしが行き過ぎると、“自粛警察”となって私的取り締まりをやりかねない。しかしこれでは、心の闇はより深くならないだろうか。

終息が見通しのつかないコロナ禍の中、現代では社会不安が進行している。運動部員などが集団感染して学校名が公表されると、格好の誹謗中傷の対象となってしまう。それはゆがんだ正義感の表れでもある。格差社会、無縁社会は所得や地位、また人間関係による社会的分断のなせる結果であるが、コロナ禍は感染の有無により新たな分断社会を生んでいる。コロナ禍はまた、従来の格差社会、無縁社会の問題をより顕在化させているようにも思われる。

コロナ禍は社会の新たな闇である。しかし、コロナの闇は知識の力で照らし出すことができる。世界各国では今、叡智を結集しワクチンや新薬が開発されつつある。一般市民の側も科学リテラシーを持って行動するべきだ。だが、それでもまだ残るのは人々の心の闇である。これを照らし出せるのは神仏の力をおいてほかにない。宗教者はそれぞれの教えに基づき、闇を照らす神仏の光明を掲げ、社会不安を和らげていくことに努めたい。「一隅を照らす、これ国宝なり」という最澄の言葉は、今の日本において万鈞の重みがある。

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