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自助・共助・公助と絆 本来の意味は違う

2020年10月2日 10時39分

「絆」を、例えば手元の1997年の講談社刊『日本語大辞典』で引くと、「①動物をつなぐつな②肉親間などの、絶ちがたいつながり。深い関係」とある。東日本大震災があった2011年を表す漢字になったが、語源をたどればむしろ自由を束縛するマイナスイメージが浮かんでくる。「人と人とのつながり」や「支え合い」といったプラスイメージで多用され始めたのは震災以降のことである。

ただし「母子の絆」というように心と情愛が通じ合う誠実な人間関係がないと使い難い。安易に乱用されていい軽い言葉ではない。

「自助・共助・公助」も使われ方が変わったようだ。四半世紀前の阪神・淡路大震災で家屋の下敷きになった人の多くは家族や近隣住民に助けられ、消防、警察や自衛隊に救出されたケースは少なかった。また被災者の住宅再建は困難を極め、公的支援が痛切に求められたこともあり、災害時の公私の守備範囲を明らかにする含みを持たせて「自助・共助・公助」が語られた。つまり災害に備えた言葉だと被災地の取材体験から認識していたが、いつの間にか広く社会生活で個人の自助努力を促す言葉に変質していたらしい。

菅義偉氏が首相就任に際し国の基本方針を「自助、共助、公助、そして絆」と述べた。家族・親族の社会的役割を重視する自由民主党の政策方針に沿い、平時の社会像を想定していることは「まず自分でできることは自分でやる」などの説明からもうかがえる。とはいえ災害向けの言葉のそろい踏みは木に竹を接ぐように異様ではある。首相の発言を巡り、主にネット上で当否の論争が起こっているようだが、幾つか看過できない懸念があるのは否定できない。

「絆」でいうと、首相の意図は明確でないが、そもそも人と人との共感があって初めて成り立つ心の領域にまで国家権力が介入するようであれば、社会の息苦しさはさらに倍加していくことだろう。

「自助」はより事情が複雑だ。日本は世界でも自己責任意識が断トツに高い国という報告があるが、自助が強調されると、それに一層拍車が掛かりそうである。自己責任論は本来国が果たすべき責任をぼやけさせる。阪神・淡路大震災でも、国の責任で被災者を救済すべきだ、という強い声がなければ、現行の被災者生活再建支援制度の創設はおぼつかなかった。

今冬に向け新型コロナ禍の再拡大が心配される。人々の感染防止の自覚は不可欠だが、ここでも検査や医療体制の整備・強化など国の責任を見過ごしにはできない。

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