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人間の弱さを見る目 思いやりの広まりこそ希望

2020年10月9日 13時07分

北半球の夏が盛りとなる7、8月頃から、次第に新型コロナウイルス感染症に慣れてきた。ウィズコロナとか新しい生活様式という言葉を受け入れて、十分に対策をとった上で経済を回すべく、できるだけ平常に近い生活に戻そうとしている。だが新型コロナウイルス感染症は収束に向かっているわけではなく、世界の死者数は増え続けている。日本でも秋から冬にかけ、感染者がまた増大するのではないかとの懸念は小さくない。

その一方で、夏になって日本や韓国では自殺者が増大していると伝えられている。高齢者や持病のある人たちは外へ出にくい日々が続く。職を失ったり、事業の継続が困難になったり、医療・介護関係者のように仕事の環境が悪化する人も増えた。見えにくい苦難が深まっている。亡くなった人とお別れができなかった、葬儀も集まれなかったという経験も広がっている。死者を送り出すことができないのは遺族の心をふさぐ。共に別れを告げる宗教儀礼の意義を再認識するが、実行できない。

働き盛りの人たちや元気な若者、子供たちには平常に近い生活を取り戻してほしいと思う半面、新たな苦難と悲嘆がじわじわと続き、深まっていくのを自覚する日々である。1995年の阪神・淡路大震災以降、国内外で様々な災害に襲われてきたが、多くの死者が出たときも、何とか苦難と悲嘆の中から復興へと向かう気持ちを奮い起こすことができた。

新型コロナウイルス感染症では姿勢を前向きに変えることが特に難しいようだ。人間の弱さを自覚させられながら、だからこそ支え合って立ち上がり、共に行動するという姿勢をとりにくい。ひたすら祈ることに専念せざるを得ないと感じる宗教者も多い。

だが、このような時にこそ人間の弱さを見据え、見えにくくなりがちな苦難と悲嘆を思いやるのが重要だ。思いやりの広まりは社会の連帯感を強め、結果的に弱さを克服する力ともなる。前向きの対策を立てようとすると、弱い部分を切り捨てて強い部分をさらに強めようとする方向に進みがちだ。「競争力を強める」ために経済成長に役立たないものは見捨てるということにもなりかねない。

競争に勝つのを目指す市場原理で社会を律する、これが繁栄をもたらすというが、本当か。他方、弱さを抱えた人間同士がケアし合い支え合うのが人間の本来の在り方だという考え方もある。今こそ、この考え方を思い起こしたい。思いやりを尊び、そこに人間ならではの希望を見る、これは諸宗教の共通基盤の一つでもある。

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