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宗教の弱体化 人間性の劣化という悲劇

2020年10月30日 10時55分

大航海時代後、西欧諸国による世界の植民地化が始まった。まずポルトガルとスペイン、それからオランダとイギリス、フランスなどが続いた。その間、南北アメリカの独立があったが、アフリカの分割、中国や中近東の半植民地化が進み、最後にドイツと日本が領土獲得競争に割り込んだ。前世紀の2度に及ぶ世界大戦の背景には列強による領土争奪戦がある。当時は国の安全と繁栄を確保するためには領土を拡張して資源、労働力、市場を確保しなければならないと考えられたのである。

この競争は、世界大戦で列強が疲弊した時に植民地の独立が相次いで終結した。植民地化は結局悲劇を生んで失敗したわけである。大戦後、東西2陣営が対立し、経済成長競争が始まった。国の安全と繁栄のために経済成長が必要というわけだ。

日本では、1960年代に所得倍増の掛け声で高度経済成長が始まった。この頃は、経済成長が達成されれば個人生活も家庭生活も豊かに、安全便利になり、政治は安定して社会福祉も完備し、文化も栄えると考えられた。人間の欲望は内需を刺激し、技術の進歩と経済成長を促すというので、欲望肯定論が唱えられたのもこの頃である。

しかし、高度経済成長は地価の高騰を招き、実体経済の成長ではなく地価の値上げによって利益を得ようとする動きが強まり、土地バブルが発生し、90年代の初めには「バブルがはじけて」高度経済成長は終わった。

世界的に見ても経済成長競争が招いたのは、実体経済をバイパスした金融操作による利潤の獲得、富の偏在と所得格差の異常な増大、何よりも地球温暖化をはじめとする環境破壊である。さらに経済成長競争は米中対立のような危険な政治的対立を招いている。

生活は確かに豊かで快適になったけれども、「先進国」がパンデミックに対して全く無力であることも露呈した。豊かになれば犯罪も減るはずだったのに、確かに凶悪犯罪は減ったけれども、詐欺は横行している。そもそも経済中心、儲け中心の社会では人間性の劣化が起こるのは当然だが、それを指摘する声はない。

軍事や経済など一極が強大になれば他の営為はそれにつれて進歩すると思われているが、実はそうではない。社会の営為には様々な領域があり、大切なのはバランスである。一極の支配は他極の劣化を招くことが多い。宗教の弱体化がそれを如実に語っているが、この欠陥は気付かれているだろうか。

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