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平和な世の持続力 異論排除で黄信号

2020年11月6日 16時30分

戦争は人の本能から起こるからなくせないという固定観念を払うため「暴力についてのセビリア声明」が国際平和年の1986年、ユネスコの国際会議でまとめられた。科学的知見に基づき世界の心理学者や生物学者らが起草した。難解だが、憎悪感情を募らせ包摂力が失われていく今の世において声明の趣旨は「人も動物もお互いが上手な力の合わせ方を習得している時こそ最も良く生きている」という一文に集約できそうだ。

一人一人の「生」の充実には協力・協調が不可欠とする声明の理念を敷衍すれば、人の自己実現の可能性を不当な外的要因で阻害するのは暴力にほかならない。為政者が自己に都合の悪い意見を恣意的に封じ込めるのも、当然暴力のカテゴリーに入る。それがまかり通る不健全な社会は、いずれひずみが蓄積し争いや戦争を招く。私たちが見てきた歴史の再来だ。

声明は暴力の支配を避け平和な社会を持続するのに人の理性に裏付けられた文化の役割を重視するが、自然の摂理に従って生きる昆虫界も、持続的な生存を保障する興味深い仕掛けを備えている。

『働かないアリに意義がある』(長谷川英祐著)によるとアリのコロニー(集団)の構成員は個々に周囲の状況を読む感度が違い、いつも感度の鈍い2割方が働いていない。だが、彼らは状況の変化で出動する予備軍であり、結果的にコロニーは持続力を保持し、管理職なしでもとてもうまく運営されている。キーワードは互いの違いを包み込む全体の包容力である。

持続性を維持するなら「違い」を排除するのはマイナスでしかない。ムシに教えられるようだが、おろそかにできない視点である。

さて、日本学術会議の人事は先日もこの欄で触れたが、6人の任命拒否の理由を依然不明確にしたまま菅政権は人事から同会議の組織改革へと「論点ずらし」を始めた。要因の一つとして軍事研究に大学を参加させる「軍学共同」に否定的な同会議が自民党などににらまれていることが指摘され、さらに任命拒否の判断に国民から負託のない警察庁の警備・公安畑出身の官邸要人が関係していたとされ、不信感を増幅させている。

それらの事情はさておき、ここで特に強調しておかねばならないのは、述べてきたように持続性である。政権の安定を優先し、政策に批判的な人材が排除されていく社会はどんどん活力がそがれ未来を失う。異論は政策を磨くというが、批判勢力がなくなればまともな政策を望めない。今の事態は極めて深刻なものをはらんでいる。

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