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「開戦の日」に思う 「前史」への注意力

2020年12月9日 13時32分

成道会の12月8日は79年前の太平洋戦争「開戦の日」でもある。開戦当時はマスコミも知識人も「聖戦」気分で高揚し、仏教界の一部では「不殺生戒」との超え難い論理矛盾を、米・英を釈尊の成道を妨害した魔軍に見立てる教説で回避したと聞く。時代の潮流にのまれる怖さを思い知らされるが、歴史の不幸には必ず前史があるものだ。だが、人々がそれと気付くのは多くの場合、不幸が起きてしまってからである。

太平洋戦争の前史をどこに取るかは議論があるが、1931年の満州事変が直接の引き金になったことは間違いない。その後の戦争拡大について、終戦時の海軍大臣で戦争終結に努力した米内光政によるものとされる昭和天皇への奉答文草稿(『証言録・海軍反省会』に収録)は、根本原因は軍の「道義心の不足」と論じている。

ずいぶん罪の重い「道義心の不足」だが、中でも満蒙開拓団の悲劇は、自国の国民を大事にしない国柄が招いた惨禍の一つとして、深く歴史に刻み込まれている。

満州事変の翌年、日本は関東軍の軍事力で満州国をつくり上げ、その防衛目的も兼ね青少年義勇軍を含む27万人の移民を送り込んだ。入植は敗戦直前の45年4月まで続けられたが、戦況の悪化で開拓民の成年男子は根こそぎ軍に召集された。8月9日、旧ソ連軍が参戦した時には関東軍はいち早く逃避、取り残された女性や子ども、お年寄りら7~8万人が犠牲になった。集団自決という悲惨な最期を選んだ人々もいた。

開拓民は長野県出身者が最も多い。同県の飯田市歴史研究所編『満州移民』によると、主に不況で生糸の価格暴落に苦しむ県南部の養蚕地域に国や県が助成金を出し、村ぐるみで移民を送り出す分村移民を進めた。地域の困難に乗じ、助成金で国策に協力させる。近年の原発誘致の手法を連想するが、民衆レベルの悲劇の前史は、似たような経路をたどるようである。

中国に残された開拓民は「残留婦人・孤児」として深刻な人道上の課題を戦後の日本社会に突き付けた。そんな中、自身も渡満経験があり、多くの孤児と肉親の再会を実現させ「中国残留孤児の父」と呼ばれた故山本慈昭・長岳寺住職の活動を忘れてはなるまい。

開拓団の数奇な歴史を顧みて思うのは、時代の潮流を一度は疑ってみることの大切さだ。前掲書によると満州への入植を「現地人の土地収奪」と見抜いて反対した何人かの村長がいたという。その判断で棄民にされる運命を救われた人も少なくなかったはずである。

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