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原発事故の実態 伝承館と現地が伝える

2020年12月16日 10時03分

来年で東日本大震災から10年を迎え、被災地に災害伝承施設のオープンが相次ぐ中で、福島県双葉町に今秋開館した「東日本大震災・原子力災害伝承館」が、原発事故を正面から扱ったという意味で異彩を放っている。

内容はそれなりに充実している。津波と東電福島第1原発の事故を日時を追って詳しく解説し、相次ぐ水素爆発、ベントによる放射能の大量放出、炉心溶融についても映像を交えて分かりやすく説明。その後も続く放射能汚染の状況、膨大な数の避難者の実態は結果として奪われた事故前の住民の生活紹介も含めて詳しい情報が示される。展示を詳しく見れば、誰でも事故の恐ろしさと影響の甚大さをいや応なく感じるだろう。

しかし、原発自体の是非や電力会社と国の推進政策の罪については、行政の施設だけに直接の言及はない。案内職員に疑問を向けると、「それは事実を見て皆さんが考えてくだされば」と答えた。だが、「原発事故で死んだ人はいない」と虚言を放った与党政治家がいたが、5キロ圏内の病院の高齢重症患者がバスで長時間の避難行中に46人も亡くなった。避難住民は今なお数万人に及び、それを苦に多くの被害者が自死をした。これを含め被災3県の中で福島だけが災害関連死が2286人と津波による直接死1614人を大きく上回る。

酪農家が強制避難と飼牛の殺処分を苦に自死した現場の牛舎の壁に書き残した「原発さえなければ」の「遺書」は展示されてはいない。そのような話題を差し向けると、地元浪江町出身だという職員は匿名を条件に「住民はいろんな思いを抱えています。当事者がそういう事実を語り部としてぜひ伝えていただきたい」と言外に悔しさをにじませた。

展示内容はともかく、同町の市街地や隣接する浪江町津島の帰還困難区域を回ってみれば、原発事故が奪ったものの深刻さは一目瞭然だ。いきなりの避難から9年余り放置されたままの双葉駅周辺地区では商店の建物が軒並み傾き、住宅も荒れ放題。ある寺院は山門が倒壊して苔むしており、今春に避難指示が解除されても街に人影がほとんどない。津島では国道沿いのガソリンスタンドも草に覆われ、まさにゴーストタウンだ。

多くの住民が生活を奪われいのちを脅かされ続ける事態に、長く避難生活を強いられながら寺の復興に尽力する地元住職は「私たちを流浪の民とし、生けるものや大地全てを汚した原発は、それ自体が人類への罪でしかない」ときっぱり言い切る。

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