コロナ禍の1年 心を鎮める教えに心向ける
新型コロナ感染者の累計は4月2日には世界で100万人を超えた。1千万人を超えたのは6月28日。12月上旬には7千万人に近づき、死者も150万人を超えた。生活のあらゆる面に影響が及び、人と人の触れ合いが重要な宗教的営みの多くが分断された。
国内では定期的な宗教行事の自粛が相次ぎ、何十年あるいは何百年と続いた神社や仏教宗派の記念行事も軒並み中止や延期の事態となった。今年は『日本書紀』編纂1300年の節目だったが、國學院大で予定していた企画は延期となった。明治神宮は創建100年の年だったが、祭典は行ったものの賑々しい行事は取りやめた。他方、コロナ退散の祈願や祈祷も行われ、突如話題となったアマビエを描いたお守りも登場した。
キリスト教やイスラム教では教会やモスクで定期的に礼拝を行うが、それも様変わりした。3月下旬には、イタリアのカトリック教会が会衆席に信者の写真を並べてミサを行ったニュースが流れた。
イスラム教でも3月頃から金曜日の集団礼拝を控える国が増えた。イスラム暦の第12月に行われる巡礼(ハッジ)は、今年は7月下旬に始まった。サウジアラビア政府は6月下旬に国外からの巡礼者の受け入れを中止すると発表した。ごく小規模の行事になった。
信仰実践とコロナ対策がぶつかり合う局面は、日本ではほとんど見受けられなかったが、韓国では2月に新天地イエス教会が集団での礼拝を強行し、感染を拡大させたとして批判を浴びた。8月にはサラン第一教会の牧師が疫学調査の妨害などで告発された。米国ではニューヨーク州のクオモ知事がコロナ感染者の大規模発生地域に対する一部礼拝所の人数制限などを10月に定めた。ユダヤ教組織とカトリック教会がこれに反発し訴訟となった。
コロナ問題とは直接関係はしないが、宗教間の分断や対立のニュースも少なくなかった。国内では香川県の金刀比羅宮が10月に神社本庁を離脱した。本庁への不信感が募ったなどの理由である。トルコ・イスタンブールの世界遺産アヤソフィアが博物館からモスクになり、7月に86年ぶりに金曜礼拝が行われた。ローマ教皇は悲しみの意を示した。フランスのシャルリー・エブド紙が9月にムハンマド風刺画を再掲し、これに関連して10月にはフランス人教師が殺害される事件が起こった。
世界中の人々が強いストレスにさらされ、感情の爆発が起こりやすくなっている可能性もある。こういうときこそ、心を鎮める宗教の教えを顧みたい。