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人新世の時代 今こそ仏教経済学を

2021年2月10日 10時36分

我々の身の回りは人工物に満ちあふれている。その大半がコンクリートやれんが、アスファルト、金属などによる建築物だ。これらの総重量が2020年、ついに地球上の生物の総重量(植物がその9割)と同じ約1兆1千億㌧に達したという。この傾向が続けば、人工物の総重量は20年後には生物の総重量の2倍に達すると予測される。人類の存在と活動は地質圏にも及ぶ巨大な影響を与えるに至った。今や「人新世(じんしんせい)」という新しい地質時代に入ったとする学者もいる。

地質圏まで影響が及んでくる以上、当然ながら地球規模での生態系破壊など、生物圏に深刻な負荷を与えているのが現状だ。人類の欲望は無限であるが、地球は有限である。このままいくと、人類自身の生存の基盤をも揺るがしかねない。早期に軌道転換を図らなければ人類の未来も危うくなる。国連のSDGs(持続可能な開発目標)もその軌道修正策の表れだと言えよう。

仏教はこれに対してどのような側面的支援ができるだろうか。SDGsにも通じるが、これを超える発想が実はすでに半世紀前に仏教経済学として提唱されていた。提唱者がドイツ出身のイギリスの経済学者であるところが面白い。その名はE・F・シューマッハー。彼は経済顧問としてビルマ(現ミャンマー)に招かれた時、そこで出会った仏教徒の生き方に感銘を受け、これを提唱した。著書『スモール イズ ビューティフル』はロングセラーである。

仏教経済学は、文明の核心が人間性を純化することにあると考え、自然の回復力とバランスの取れた経済開発を目指す。それはまさに仏教でいう「中道」の道である。それは富を敵視するのではなく、富への執着を絶つことを問題にする。そもそも人間の欲望は物の世界では満たされず、心の世界でこそ達成されるものだ。

物の世界では最小限の消費で済ますのが小欲知足の教えであるが、それはただ単に欲望を抑えることを意味しない。むしろ眼差しを内面へと向け換え、そこに無限の可能性を見出すことが重要である。地球は有限であるが、心の資源は無尽蔵であり、これを開発していくのが仏の智慧なのである。

ガンジーは「大地は一人ひとりの必要を満たすだけのものは与えてくれるが、貪欲は満たしてくれない」と説いた。人類が大地に影響を与えるまでに至った人新世の時代こそ、仏教経済学の出番だと言える。それは最小限の資源で最大限の幸福を得ることを教えてくれるのである。

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