コロナ後の宗門 包括・被包括の信頼関係
各宗派で2月から3月にかけて、新年度予算などを審議する定期宗会・宗議会が開かれた。
昨年春は新型コロナ特措法が3月13日に成立し、4月7日には東京、大阪など7都府県に緊急事態宣言が発令。宗議会も日程短縮など、影響がすでに出ていた。
今年は感染拡大の第3波で、1月8日、関東1都3県に2度目の緊急事態宣言が発令され、14日には対象が11都府県に拡大されるというタイミング。さらに延長された1都3県を除き宣言は予定前倒しで解除となったものの、各宗派は長期化するコロナ禍の影響を強く意識して新たな年度の計画を立てることになった。
長時間に及ぶ会議でもあり、アルコール消毒はもとより、出席者のPCR検査等を実施し、傍聴席を別室に設けるなど、各宗派は感染防止に万全を期した。規程改正で議員のリモート出席を可能にしたところや文書審議形式を取った宗派もあった。宗議会日程を短縮し、通告質問も制限するなどしてコロナ下の異常事態への対応を図った。
開会式では管長宣示や総長の施政方針演説で宗門にとってのコロナ禍の意味が言及された。日蓮宗の菅野日彰管長は宗祖降誕800年に当たり「まさに現代における宗祖降誕の意義が問われている」と教旨。浄土真宗本願寺派の石上智康総長は文明史的視点で中世ヨーロッパのペスト禍とカトリック教会の衰退を引例し、仏教がその二の舞とならぬよう、教えの本質を伝える重要性を強調した。
上程された予算案件はそれぞれの宗門の特殊な事情を反映しつつ、程度の差はあれ厳しい緊縮型となった。引き続き行事の規模縮小や中止を決める一方で、新しい教化、人材育成のシステムを構築するためIT化への投資も行われている。一般寺院の護持環境悪化を考慮した宗費減免などの支援策を盛り込んだところは多い。
各宗派は信仰を同じくする自治の組織。異常な事態が続く中、可能な範囲の対策を打ち出していると考えられる。他方、被包括の法人側は宗派・教団の役割、存在意義を改めて現実的な問題として考えることがあったのではないか。
信仰の共同体としての宗派の価値は言うまでもないが、近代以降、特に戦後、歴史的な本末関係と共に、共助の組織としての実質が教団に対しより強く求められるようになってきた。コロナ禍で宗門の行政機関の働きは十全ではないとはいえ、このような時期に本末関係がどのように機能するかは重要な問題だ。包括・被包括の信頼を一層固くするべき時である。