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大川小の遺構巡り 公的伝承施設での追悼

2021年3月31日 10時58分

東日本大震災で児童74人が津波の犠牲になった宮城県石巻市立旧大川小で、被災から10年を迎えたこの11日に、追悼の在り方を巡って遺族や関係者の気持ちを逆なでするような事態が起きた。

廃虚となった校舎のすぐ前にあった仏教式の慰霊碑、線香を上げる簡易祭壇などが市によって撤去され、かなり離れた場所に移されていたのだ。これらは震災直後に我が子を失った親や地元の住職らが設え、遺族や各地から慰霊に訪れる人々が合掌する場だった。市が校舎を震災遺構として保存し周辺を整備するのに合わせ、「伝承の区域」からの撤去を前もって遺族らに通告していたというが、この日訪れた遺族らは愕然とした。

この場で次女を亡くし悲惨な体験の語り部活動をする佐藤敏郎さんは「死者への追悼の気持ちと災害の伝承は切り離せるものではない」と批判。「市が政教分離を念頭に置いているとすれば、履き違えだ」との強い声も聞かれた。しかも広い空き地の外れに移転された祭壇などは学校と反対側を向いており、冥福を祈って合掌すると校舎に背を向けることになる。

現場を折に触れて訪れ、花を供え続ける遺族の女性は「校舎は亡くなった子供らが生前に学んだ思い出の場、命を落とした場で、墓碑のようなものなのに。それを見ないで拝むなんて信じられない」と訴えた。肝心の校舎建物についても佐藤さんらは「市は『現状保存』と言っているが、しっかりした保存処理が行われず年月を経て崩れてしまう。それが震災体験の風化にもつながる」と心配する。

各地の多くの震災遺構は特殊な樹脂などによる保存処置を経て既に一般公開されている。悲劇や教訓を末永く伝え残すためだ。遺族らが「市は保存について我々の意見を聞いてもくれない」と不信感を抱く背景には、同小での被害について避難誘導や防災体制の不備を巡る訴訟で市側が被告として対立し、遺族勝訴が仙台高裁で確定したという一連の事情があるとの指摘もある。

この震災では各地で政教分離を巡る同じような問題が生じたが、大川小の例は大きな論議を呼びそうだ。現地に慰霊碑を建立し、供養に通い続ける近くの寺院の住職は、自坊に安置した「東日本大震災津波横死諸精霊」の合同位牌を前に10年目の法要を営んだ。位牌の裏の日付には通常の元号に加えて西暦で「2011年3月11日」と記されている。「何百年たっても分かるように。震災の記憶を絶対に風化させないためです。死者を弔い、語り伝えるのが僧侶としての務めです」と住職は語る。

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