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釈尊の降誕を寿ぐ 憂いなく安穏であること

2021年4月7日 11時29分

4月8日の釈尊降誕日は、誕生仏に甘茶をそそぐ「灌仏会」が古くから営まれてきた。明治以降は「花まつり」として親しまれるようになり、全国の寺院、仏教系の保育園や幼稚園、地域仏教会等でお釈迦様の誕生を祝う。誕生仏を安置した花御堂を白象に乗せ、稚児たちが商店街を練り歩く風景が風物詩となっている地域もある。

今年の花まつりは、新型コロナウイルスへの対応で例年通りとはいかないかもしれない。しかし、にぎやかな行事はできなくても、仏陀=釈尊の教えを学ぶ機縁とすることはできる。日本仏教は13宗56派を数える宗派仏教だが、歴史をさかのぼれば釈迦牟尼仏に帰一する。仏陀の教えを離れて仏教はない。

最古の仏典の一つ「スッタニパータ」を読むと、仏陀が遺した数々の戒めに触れることができる。人は何を拠り所として生きるべきか、どうすれば苦悩を少なくし、心穏やかに生きられるかを考え、自らを省みる時間を持つことができる。仏陀の言葉は国や時代を超えて私たちの胸に響く。どんな生き方が正しくて、どんな生き方が間違っているのかを知る指針となる。そこには生きる糧がある。

幸福について、仏陀は「世俗のことがらに触れても、その人の心が動揺せず、憂いなく、汚れを離れ、安穏であること、――これがこよなき幸せである」と説く。また「慈しみと平静とあわれみと解脱と喜びとを時に応じて修め、世間すべてに背くことなく、犀の角のようにただ独り歩め」や「生まれによって賤しい人となるのではない。行為によって賤しい人ともなり、バラモンともなる」(中村元訳)の言葉も知られる。

「足ることを知り、わずかの食物で暮らし、雑務少なく、生活もまた簡素であり」や「あたかも母が独り子を命を賭けて護るように、一切の生きとし生けるものどもに対しても、無量の慈しみのこころを起すべし」といった言葉は、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」の詩の世界に反響している。

賢治の詩は没後、遺品の中から発見された手帳につづられていた。詩に続くページに「南無妙法蓮華経」の題目と仏菩薩の名が曼荼羅形式で記されている。法華経を信じた賢治は、欲はなく、決して瞋らず、つつましい生活をし、他者の苦を背負うために奔走する生き方を願った。それは仏陀の教えを実践して犀の角のようにただ独り歩む姿と重なる。

降誕会には仏陀の教えを人々に知らせる意義がある。仏教者にとっては仏陀の教えを改めて我が身の戒めとする機縁となる。

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