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求められる危機管理 震災での悲劇を教訓に

2021年5月12日 16時07分

3度目の緊急事態宣言に至ったコロナ禍によって各地で医療状況が切迫し、ある県の医療責任者が「震災と同様の危機だ」と語った。大阪などでは病院のベッドも医療資源、人材も不足して病床使用率が危機的段階に達し、発症者が入院できないのが常態化した。救急車が出動しても患者搬送先が見つからず、救急車内に1日半も待機させられる事態まで起きた。

行政と医療機関の効果的な対処がまさに問われているが、東日本大震災の際、原発事故による医療危機に直面した経験のある福島県の神社宮司、田代公啓さんは「想定外の緊急事態では平時マニュアルは万全ではない」と、非常時の危機管理への教訓を語る。

田代さんは当時、同県いわき市の高校長を務めていた。原発事故による緊急避難指示でその高校は、発電所近くの同県大熊町にある双葉病院と関連する高齢者施設の患者らの一時的な避難先に指定された。数百人の患者、高齢者は何陣にも分けて大型バスで運ばれたが、原発の水素爆発で放射能汚染の危険が迫る中、搬送は混乱を極めた。

病院から直線距離は近いが、間に原発が位置するためバスは内陸部まで大きく200㌔以上迂回した。しかもいったんいわき市の別の病院を目指しながら病床が満杯のため同高に向かい、出発から到着まで十数時間もかかった。128人を乗せたバス車内の惨状に出迎えた田代さんは絶句した。

医療者はおらず、厳寒の中で重症者も座った姿勢でぐったりしており、2人の死亡が確認された。点滴が外れ脱水状態、汚物でおむつがずり落ちた人も多く、異臭がした。教職員で長机を担架代わりに患者を運び、柔道用の畳を敷いて用意した体育館でカーテンを割いておむつにしたが、治療もほとんどできないままにさらに12人が絶命した。関係機関からの毛布や食料など救援物資も全く足りなかった。

ほかのバスも含め犠牲者が計50人に達した悲劇の元凶が原発事故であるのは間違いないが、避難搬送に当たって、県や町など自治体や災害出動の自衛隊、病院側の対応の混乱、連携や意思疎通に大きな問題があったことも明らかだ。

究極の「地獄」を見た田代さんは、せめてもの慰霊に遺体に数日前の卒業式で使った花束を手向けた。神職として命を守ることの重みと困難さとを痛感したという。コロナ病床逼迫に伴って各地で“命の選別”が現実化した今、宗教者ならずとも人命最優先をいかに実現するか、どう行動すべきかを真剣に考えなければならない。

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