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中外日報宗教文化講座2021 第18回「涙骨賞」を募集

声を上げる勇気 「見ようとしない」危うさ

2021年5月19日 14時32分

盲ろうの二重障害者で、世界の障害者の教育と福祉の向上に尽くしたヘレン・ケラーは「盲目であることは悲しいが、目が見えるのに見ようとしないのはもっと悲しい」という警句を残した。光と音を失った末に到達したヘレンの境地は知る由もないが、彼女が嘆く「見えるのに見ようとしない」人の習性は、実は時代を超えて民主主義をも覆すリスクをはらんでいる。結果として生じる沈黙が現状の丸ごと肯定につながるからだ。

国など公的機関の強権的な権力行使が当事者の怒りを買うケースが近年、珍しくない。福島第1原発の汚染処理水について政府が海洋放出を決めたのもその一つだ。マスメディアの多くは、放出による風評被害の防止と補償に焦点を当てたが、どこか違和感がある。既にこの欄で指摘したことは重複を避けるが、人は悲劇的な出来事に遭った場合、避けられたはずだという人災的要素が強いと苦痛は一層耐え難くなる。

福島県では震災の関連死が他県より断トツに多い2300人以上に上り、その多くは人災である原発事故で避難生活が長期化した人たちだ。書き置きに「お墓に避難します」と記した93歳の女性など約120人が自ら命を絶った。避難者は今も3万6千人、うち8割は県外で暮らし、それらの人々に対しても国や東京電力の誠意ある対応はうかがえず、誰も責任を取ろうとしない。放出への漁民の憤りに耳を傾けると、そんな数々の理不尽な仕打ちが立体的に見えてくる。間違っても「放出は仕方ない」と安易な判断はできない。

震災の無数の悲話の中で、その本質を見据えておかねばならないもう一つの事例は、宮城県石巻市の大川小で児童74人と教師10人が津波で死亡・行方不明になった悲劇だ。学校の裏山に避難できたのに児童は地震後50分間も校庭に待機させられた。犠牲は津波によるというより逃げなかったために生じた。教師は非常時に集団思考停止のような状態に陥ったのか。学校の権威主義的で上意下達のシステムの弱点が露呈されたと指摘されるが、事実の検証をかたくなに拒み続ける市教委や学校の底冷たさが児童の親たちをさらに苦しめ、悲劇を一層際立たせている。

従順さより自分で考え、不安を感じれば声を上げ、行動する勇気を持つ若者を育てるのが教育のあるべき姿。その視点で見ても、大川小は見過ごしにはできないものを提起した。日本は俗に「お上」への異議申し立てを嫌う精神風土といわれるが、震災は「見ようとしなかった」幾つもの問題を可視化し続けている。

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