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宗教施設の存続問題 法人解散も念頭に

2021年6月4日 11時11分

日本では、伝統仏教の寺院の大半は世襲制である。新宗教の教会や布教所にも世襲化された所が多い。そこでは、宗教施設を支えるのは寺院家族、教会家族である。家族が弱体化しているのは、日本社会の全体的な傾向であるが、宗教者の家族も例外ではない。その結果、高齢の住職や教会長で何とか維持している宗教施設も増加した。

いわゆるアウトリーチ的な社会活動ができるのは、檀信徒が一定数あって経済的基盤が確立し、副住職や教会後継者が自由に動ける宗教施設である。そういう寺院や教会では、様々な活動の選択肢が可能だろう。しかし、そのような諸条件が整わない場合、住職や教会長の高齢化とともに、自坊や自教会の維持存続そのものが問われることにもなってしまう。

当然そうはならないように、これらの宗教施設を抱える宗門や教団は、可能な限り手を打ってきた。だが、ついに住職不在となった寺院がある。これを兼務寺院として引き受け、新たな担い手が現れるのを待つというのは最後の手だ。とはいえ、地域社会ごと消滅するような限界集落にあっては、そうした延命策も不可能である。

万策尽きて、維持存続がもはや困難となった場合、宗教法人の解散、または吸収合併ということにもなろう。宗門や教団関係者はあまり語りたがらないが、現実にこうした手続きを行っている所は数多い。これは寺院や教会などが、家族運営で担われ、代々世襲されてきたことが背景にある。檀信徒の側も、生活の近代化や都市化の流れの中で冠婚葬祭の私事化、脱宗教化が進み、寺院や教会との付き合いが負担になっている。

寺院や神社のように、地域に根差してきた宗教施設が消滅するのは、由来や歴史があるだけに伝統文化の断絶につながり、社会全体にとっても痛手は大きい。しかし、この世は無常であり、確実なものは何もないと説いてきたのが仏教である。身をもってその教えを示していくことも、一つの処し方ではないだろうか。先師の法灯を失うのは抵抗があるが、仏縁さえあれば再興された例もある。

世の中は変化していく。宗教が人々にとって必要不可欠なものである以上、再び形を変えて寺院や教会は再生するはずだ。また、人間が生きている限り、家族は多様化しながらも、決して無くなることはない。いつか血縁や世襲制だけにとらわれない、新たな家族による寺院や教会も現れるかもしれない。そのことを信じ、安んじて受け止める姿勢があってもよいのではないか。

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