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時の記念日 時間を尊び、守り、活かせ

2021年6月9日 11時38分

6月10日は「時の記念日」である。国民の祝日ではないが、日本の記念日として大正9(1920)年に制定されてから今年で101年になる。天智天皇10(671)年の4月25日に近江朝で初めて漏刻(水時計)により時が知らされたことが『日本書紀』に書かれており、この日を太陽暦に換算して記念日としたものだ。

「時の記念日」は、もともと「時間を守る」という社会教育の一環として提案された。当時、日本人は時間の観念が乏しくルーズだという外国人の評価に対し、規則正しい生活習慣を身に付けるよう促す啓発運動として始まったもので、時間の浪費(または空費)を戒める「時は金なり」の意味合いが強い。「時の記念日」を国民の祝日にする運動も続けられてきたが、いまだ実現には至っていない。

命の時間が砂時計に例えられるように、時の大切さは「時は金」以上の意味を持ち、命の尊さに等しい重みがある。時間についての認識は世界に共通している。中国には「少年老い易く学成り難し、一寸の光陰軽んずべからず」「歳月人を待たず」などの句があり、アメリカには「タイム・イズ・マネー」の諺がある。インドのガンジーは「明日死ぬかのように生きよ、永遠に生きるかのように学べ」と諭した。いずれも諸行無常の自覚から発せられた言葉だろう。

道元禅師は著書『正法眼蔵』の「有時」の巻で「時すでにこれ有なり、有はみな時なり」と論じ、存在と時間は一体のものであるとの認識を明確に示している。修行僧が生活する僧堂の入り口に「生死事大 無常迅速」の文字を書いた分厚い木板が掛かっているのは、一瞬の時間も無駄にせず仏道修行に打ち込み、生死の問題を解決するために精進せよと、覚醒を促すためである。

毎年の「時の記念日」に「時の宣伝ポスター」を各方面に配り続けた和尚がいる。東京都品川区の曹洞宗海雲寺が長年発行したポスターは、「時を尊び、守り、活かせ」のスローガンを大きく掲げ、「時間を大切に 生命を大切に 環境を大切に」などの言葉を添えて、地域の人々に気付きの鐘を鳴らした。命の尊さを広く知らせたい一念に突き動かされての「印施」と呼ぶべき布施行で、これもまた布教の一つの形である。

命の尊さを説くのは宗教の領域であり、宗教者の役割である。「時の記念日」を、時間の大切さと命の尊さについて考える日と受け止めたら、一層意義深いものになるのではないだろうか。

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