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コロナで相談急増 自死念慮者支える現場

2021年6月11日 11時14分

和歌山県で自死念慮者の相談を受け、保護する取り組み「いのちの電話」を長年続ける白浜バプテスト基督教会の藤藪庸一牧師から、コロナ禍の影響で相談が倍増しているとの知らせが来た。白浜温泉の名勝・三段壁に設けた電話など各地からの“SOS”が以前は年間100件程度だったのが、この1年で200件に上った。

全国的にもコロナ禍の影響によって職を失い、生活が破綻するなどの理由による自死の増加が問題になり、特に若い女性の自死が多いと報道されている。

牧師の運営するNPOは希望する相談者は保護し、教会付属の住家で共同生活しながら職を見つけ自立するようにしているが、住居の過密化なども不安で、遠方から「行きたい」という切迫性の比較的低そうなケースは「感染状況が落ち着くまで待ってもらわざるを得ない」という。

自死念慮の理由はコロナ禍が大きく影を落としていることが多い。トラック運転手の40代の男性は県境をまたいでの運送の仕事を妻が心配し、結局仕事を辞めた。しかし以前は決して悪くなかった夫婦仲がこじれ、妻は離婚を切り出して預金を持って出て行った。妻に連絡もできない男性は自暴自棄になってしまい、死を考えた。

特段の理由なく家庭不和に陥る例が相次ぐ一方で、経済的困窮も目立つ。料理人として50年のキャリアのある70代の男性は、昨年から仕事が全くなくなって暮らしに困り、「もう死ぬしかない」と訴えてきた。

24時間体制で電話を受け付け、「自殺の名所」といわれる現場の見回りも続ける藤藪牧師は「もともと人とのつながりが絶たれて孤立化していたところへ、コロナ禍による様々な要因が拍車を掛け、死を思い詰めるまでに追い込まれたのです」と話す。

感染拡大の中でも若い世代を中心にインターネットやSNSで交流を持つ“ニューノーマル”がもてはやされてはいるが、「ネットのつながりは楽ですが、実質的な助けを得られるまでの関係をつくることはできていないのかもしれません」と分析する。

これまで二十数年間で千人近くの自死念慮者の自立を支援した牧師は、保護した人が新たな人生を自ら切り拓く力を付けることを指針にしてきた。「こういう状況では独りでいられる強さも必要になる。そこで普段から何を拠り所にしているのかが問われます」と訴える。何もなくても独りでも生きていく、そういう希望を人間の心に与え、支えるのも宗教の大きな役割だろう。

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