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失敗学の研究テーマか 危機さなかの東京五輪

2021年6月30日 10時52分

失敗の原因を究明し、再発を防ぐ「失敗学」は、東日本大震災福島第1原発の事故で注目された。その核心は、技術的側面よりむしろ「見たくないものは見えない」「起これば困ることは起こらない」ことにしてしまいがちな怠慢や慢心など心の問題や組織の在り方にメスを入れ、改善を促すことにあるようだ。原発事故や史上最大の失敗といえる太平洋戦争はもとより、コロナ禍が深刻化する中での東京五輪も新たな研究テーマに加えられそうな予感がする。

日本は忘れっぽい国柄といわれるので原発事故を調査した「国会事故調」の報告書を復習したい。

報告書は、経済成長を政・官・財一体で成功させた日本のエリートは前例踏襲と組織の利益を守る使命を国民の命を守ることより優先させ、安全対策が先送りされたと事故の背景を厳しく指摘した。報告書の英語版には、慣習や権威に対する日本人の従順性、集団主義がもたらした「日本製」の事故だったという文章がある。

大津波の経験を顧みず、根拠もない「安全神話」が独り歩きし、国民一人一人に当事者意識が乏しく、技術者は組織内で自分の意見をはっきり言わない。そんな精神風土の下でずるずると原発依存を深めていった。振り返れば事故は必然的な結果だった感さえあるのに、今、40年を超える老朽原発もすでに再稼働を始めている。

失敗学会の畑村洋太郎会長(元「政府事故調」委員長)は以前、「論座」の取材に「どんなに考えても気付かない領域が残る。これを別の言葉で言えば、事故はまた起こるということ」だと語った。脱原発の主張ではなく、かつてのように「安全」と言い切るやり方が間違いだという考え方に立つ。

先の大戦も、満州事変以来一つの誤った判断が次の難問を生み、また誤判断を誘うという泥沼に陥り、ずるずると後に引けなくなって最後は絶望的な対米英戦に突入した。それでも国民の多くは開戦を喜んで受け入れた。その要因の一つが軍部におもねり戦意高揚をあおった主流メディアの報道にあったことを忘れてはいけない。

五輪も似通った道筋を歩んでいないだろうか。国は泥縄的な対策を続け、再び状況が深刻化する中での開催に一部で「賭け」という発言を聞く。対象は国民の命と健康だ。

五輪は無事終わるかもしれない。だが、失敗学の研究テーマか否かはさておき、命と健康の軽視が「賭け」という言葉で透けて見えるように思う。各界から湧き上がる様々な議論を超えて、問い続けねばならない問題である。

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