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多様化する葬祭 問うべきは宗学上の意味

2021年7月16日 10時47分

ノンフィクション作家・立花隆氏の死は2カ月近くたってメディアに報じられ、「樹木葬で埋葬された」と伝えられた。立花氏は生前、死後の葬式や墓には全く関心がなく、生ごみなどの有機物を微生物で発酵・分解して堆肥を作る「コンポスト」のように葬ればいいが、法的に難点があるので、妥協策として樹木葬にし、「生命の大いなる環の中に入っていく」ことを望んでいた。

葬儀無用論や葬儀の改革を求める動きは半世紀以上前から見られる。1968(昭和43)年に発足した「葬式を改革する会」は、仰々しい葬式や告別式を廃止して葬儀を簡素なものにしようという運動で、葬祭に伴う虚礼や多額の費用への批判に力点があった。その後、葬祭に対する人々の意識は大きく変わってきた。

葬祭の在り方への批判は商業主義に対する部分が大きく、それが「葬式仏教」として寺院に向けられた。葬儀は檀家制度に支えられてきたが、核家族化、人口の都市集中を背景に、都市圏での宗教風土の変化、伝統的な宗教民俗の地殻変動が起こり、そこへ経済不況の波が寄せて、葬儀から埋葬に至る一連の葬送儀礼の多様化が顕著な現象となった。

葬祭問題を正面から問い直す動きは仏教教団にもあった。曹洞宗総合研究センターは1999(平成11)年から共同研究テーマに「葬祭の現代的意義」を掲げ、仏教の葬祭を教理ではなく仏教文化として捉える視点に立って議論した。研究課題は死の問題、葬祭儀礼の機能、霊魂と無我説の関係、授戒や引導の意味、戒名の必然性の根拠など多岐にわたり、その成果を踏まえたシンポジウムも開催された。

当時の奈良康明・総研センター所長は葬祭儀礼の現状について、日本の民俗を踏まえつつ日本人の心情と合致するよう整備・発展し、歴史的に教団の経済的基盤ともなってきたと説明。問題の本質を「葬祭が宗派それぞれの世界観の上に発達したものでありながら、今日の宗学の中に位置付けられていない」と指摘し、「教団の経済的基盤をなしている葬祭や祈祷儀礼が無視されている一宗の宗学に、一体どういう意味があるのか」と問い掛けた。

参加者の発言の中には「葬式や法事は死を身近に実感し、いのちを学ぶ絶好の機会」と積極的に意義を認めるものや、「業者主導で葬儀の商業化が進めば自然葬は増えるだろう」といった自省の声もあった。言えることは、葬祭の現状を僧侶自らが考える努力を怠ってはならないということだろう。

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