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戦後は終わっていない 76年目の「8・15」

2021年8月11日 14時48分

76年前の終戦の後、親を失った十数万人の戦災孤児が保護もされない浮浪児になり、街をさまよっていた。小説『鞍馬天狗』などで知られた作家・大佛次郎は英国の知人に「なぜ黙って見ているだけなのか」と問われ、返事に困る。正直に自分の気持ちも省みて、大佛は「私たち日本人の愛情の湧く場所が浅いのだろうか?」と考え込んでしまう。知識人の手記などをまとめた『証言昭和二十年八月十五日』への大佛の寄稿文で知った。

作家の林芙美子も「孤児や浮浪児の苦境に無関心な国が文化的であるはずがない」と論じていると、ジョン・ダワーの『敗北を抱きしめて』が触れている。

愛情が浅い、には反論が出そうだが、人が軽く扱われたのは事実だ。東条英機陸相が対米戦の開戦をためらう近衛文麿首相に「人間一度は清水の舞台から目をつぶって飛び降りることも必要だ」と迫った話は有名だ。大戦で同胞310万人を犠牲にし、うち海外での戦没者240万人の多くを餓えで死なせた。戦争末期の特攻隊や人間魚雷に動員された若者たちは国のためと信じ、従容として死地に赴いた。彼らも絶望的な戦力の劣勢を補う「人柱」にされたと言わざるを得ない。

無謀なことを「やれば何とかなる」と強引に進め、引っ込みがつかず不幸な結末に至るのは日本のお家芸のようだが、それで犠牲になる社会的な弱者に国の関心は薄い。戦災孤児にも国はずいぶん冷淡だった。冒頭の大佛の話を少し意訳して、そんな国や政治を認め続ける精神的な土壌に問題があると解釈できないか。終戦の混乱期に個人の責任を問うのは酷だ。

二つの問題を挙げておきたい。

海外戦没者のうち112万体の遺骨が置き去りにされている。遺骨収集は曲折を重ねてきたが、あまり知られていないようである。故郷を遠く離れて非業の死を遂げた者の魂は鎮まらないという。日本は死者の霊をも軽視する国なのか。靖国神社に祀られているからいい、というものではあるまい。

もう一つ、国は軍人・軍属と遺族に「国との雇用関係」を理由に総額60兆円を援護したが、50万人が亡くなったともいう空襲被害者への補償はゼロ。欧州諸国と対照をなす。各地で老いた被害者が「国は補償を」と起こした訴訟は「立法で解決すべきだ」などと全て退けられ、何度も試みられた議員立法も実を結んでいない。

戦争被害者の苦しみを知ることが大事なのは、それが戦争の抑止力になるからだ。改めてそのことを考える「8・15」にしたい。

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