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深い専門性とは 医療・福祉の現場から

2021年10月6日 13時46分

「なぜもっと専門性を発揮して世話をしないのか」。新型コロナウイルスのワクチン集団接種会場で、支援活動として接種業務の補助や来場者のケアに当たるベテラン看護師の声だ。現役は退いているが、以前は長年幾つかの病院で看護の責任者を務め、後輩の指導にも当たった経験豊富なこの女性が嘆くのは、行政施策として時間給で臨時に集められた看護職の働きがあまりに事務的だということだ。接種者にまるで流れ作業のように対応している、と。

確かに医療逼迫の状況で看護職も大変であり、疲弊もあろう。だが感染や副反応への心配を抱え、慣れない場所へ足を運んで不安を訴える高齢者に、何か言葉を掛け気持ちを聴くというケアがあってもいいのではないかと看護師は言う。看護職の専門性は、医師の医療的補助だけでなく患者への心身を含めた全人的寄り添い、「キュア(治す)よりケア(癒やす)」にこそあるというのがかねての彼女の信念であり、接種会場でも疲れを押してそれを実行している。

この話を巡り、「ケアとは何か」を論議するある研究会で、専門性の「深さ」が話題になった。例えば病院などの現場では高度に発達した医療技術によって看護職も高度な専門的医療対応を求められ、医療機器の操作やモニターの観察に忙殺されやすい。勢い、患者とゆっくり話すなどの時間が取りにくく、「専門職なので寄り添う余裕がない」「専門性がケアの邪魔になる」という意見もある。

だがそうか。「本当の深い専門性とは技術に詳しいなど身に付けた“専門性”を少し横に置き、相手にしっかり接することのはずだ」との指摘は共感を呼んだ。生身の人間の看護職にスーパーマン、聖職者であることを強いてはいけないが、この専門性論議は宗教者にも当てはまる。関西の寺院が運営する老人ホームでヘルパーを務め、臨床宗教師でもある僧侶は、福祉と仏教の“専門職”としての自覚で力み過ぎていたという。

だがある時、世話する施設の老婦人に「近所から来ました」と告げると「近所の兄ちゃんか。よろしゅう頼むわ」と返され、肩の力が抜けた。肩書や資格に象徴されるような“専門性”は自分事でしかない。「寄り添いやケアの内容を評価し、私が何者かを決めるのはあくまで相手だ」と気付いた。

宗教者の深い専門性とは何か。例えば「人に親切に」という教えを、経典の文言でとうとうと語る解釈・説明の専門家である前に、その教えを自らの身に付け、実際の行いをもって示すことだろう。

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