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AID出生者の苦悩 寄り添いと技術の歯止めを

2021年10月21日 17時00分

夫以外の精子を使った非配偶者間人工授精(AID)で生まれた子供は累計1万人とも1万5千人ともいわれる。1948年の慶応義塾大病院での実施が初めて発表されて以来同様の数字なのは、実施や出生が明らかにされないケースが多々あるからだと、出生の当事者である石塚幸子さんが生命倫理の研究会で指摘した。

23歳で自らの出生事情を知った石塚さんは「それまで信じていたもの、自分のアイデンティティーが崩壊し、親に騙されたという衝撃」に打ちのめされた。精子提供者の情報はなく、悲しく苦しい気持ちを相談する相手もいない。遺伝的情報など医療受診に不安が生じ、自分が何者かという苦悩、何より親子の信頼関係崩壊にずっと苦しんだ。そこから、自分がどのように生まれ育ったのかを子供が知る基本的人権としての「出自を知る権利」の重要性を強調するが、昨年末成立した生殖補助医療法でも明確な実効的規定はない。

同様にAIDで出生した横浜の医師は、家族で撮った写真が霧のように消えていく虚無感に苛まれた。「世間に隠すような後ろめたい方法で自分を生んだと親が思い続けたことも苦悩だった」と、出生経緯以上に両親への不信感が重荷になり、克服するのに何年もかかったという。石塚さんの説明のように、出生者は多くが既に成人して子供をもうけた人も少なくなく、その子供に親である自分の“ルーツ”をどう説明するかという新たな問題もある。告知を誤ると親子の不信を再生産することになりかねない。

隠すのは周囲の偏見から逃れたいからだろうが、不妊治療に限らず子産み子育てに関する社会の根強い固定観念が抑圧になっている。人工授精でも配偶子提供でも、特別養子縁組でも一人親でも、家族の形は多様であっていいのは当然のこと。それはいのちの重みが同じだということに等しい。現に、最近ではLGBTQ(性的少数者)の同性カップルが子供を持つために精子提供を希望するケースも増えている。

一方でAIDだけでなく受精卵凍結保存や代理出産、果ては「遺伝的に優秀な」子孫をつくるデザイナーベビーなど生殖医療の拡大はとどまるところを知らない。生命倫理を置き去りにした技術の暴走に歯止めをかけ、当事者に寄り添う役割は宗教者にもある。「難しい先端科学のことは専門家に」と避けて通る問題ではない。上記医師は「医療者だけでなく、人智を超えた存在から委嘱を受けたいのちの専門家である宗教者が悩みを受け止めてほしい」と訴える。

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