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疎外という問題 仏教から現代に問い直す

2021年11月5日 11時00分

最近、疎外という言葉をあまり耳にしない。人が組織に埋没し、人間性とか個性を失っていく。昨今、流行の言葉で自己決定権を侵される。経済が高度成長を始めた頃、学生だった世代には疎外とはそういうもので、社会に出れば自分たちに関わってくる切実なこととして友と悩みを語り合った。

労働者が強欲な経営者に機械の歯車のごとく酷使される世を風刺したチャップリンの名作『モダン・タイムス』は必見の映画だった。

やがて日本は「一億総中流」と呼ぶ時代を経験したが、疎外という問題は今も解決されていない。逆に貧富の格差と表裏の関係で一層深化し内攻している感がある。

勤労者の4割近くを占める非正規労働の待遇格差をはじめ男女の給与格差、職場での数々のハラスメント、母子家庭などひとり親世帯の貧困率が5割近くに上ることや親の所得格差が子の教育格差に直結し、教育格差がさらに所得格差を広げ階層構造が固定化していく不公平さ……挙げれば切りがないが、そこには必ず時代の波に乗る人々と、挫折し疎外されている人々がいる。貧富の格差は、コロナ禍でさらに広がった。

国際社会ではコロナワクチンの接種が開発途上国で遅れている。富が偏る世界は、国民の命までも丸ごと軽視してはばからない。

格差社会だからと言ってしまえば議論はそこで止まる。問題は、そんな社会の不公正さを問い質す声が、なかなか大きくならないことだ。時代の潮流は、むしろ金もうけなどの成功者が無条件に称賛され、競争に脱落した「負け組」は自己責任と切り捨てられ、疎外される。それでいいのだろうか。

法華経に帰依し、東北の農民と「苦」を共にした宮沢賢治は『農民芸術概論綱要』に「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」と記す。その哲学的な真意はつかみ難いが、ここでは人の幸福に必要な財や利益は他者がいて初めて得られるのであり、その意味で社会的なもの。利他の心を持たず、自分一人の利益を追い求めても幸福は得られないという趣旨と理解したい。つまり共生の世への願いである。

現実問題として、弱肉強食を生む近年の新自由主義的な政治は行き詰まっている。先日の衆院選で「新しい資本主義」や「分配」が争点の一つに持ち出されたのも、その表れだろう。議論は深まらなかったが、今の時代は格差の是正と同時に人々が分断されず、関係性を持って生きられる国を目指さないと疎外は解消できまい。仏教思想の働きが求められている。

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