PR
購読試読
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
お位牌Maker
PR
宗教文化講座 翠雲堂

不妊治療相談通じ 人生のカウンセリング

2021年12月8日 10時18分

不妊治療や生殖補助医療で有名な病院で長年、患者のカウンセリングに当たってきたカウンセラーの女性が、その体験を記録としてまとめている。壮絶とも言えるその具体的な相談内容はプライバシーで紹介できないが、「不妊相談の多くは人生についての相談」というそのカウンセラーの受け止めには大きな意味がある。

相談者は泣いて悲嘆を訴え、自責の念に苛まれて「死にたい」とすら口にする。町でお腹の大きな猫を見るだけで苦悩が募る。そういう苦しみを抱えた女性が事情を打ち明けると、医療的な事柄に加えて当然に家庭問題や人間関係、生活設計といった人生についての相談になる。それは、そもそも子供を持ちたい、育てたい、それをどのようにするかということは人生の大きな問題だからだ。いや、人生問題そのもの、生き方の問題とも言えよう。

場合によってはその人が実生活つまり今の人生に十分満足していたら、もし不妊と分かってもそこまでは苦にしないかもしれないし、カウンセリングする中で、無理に過酷な治療をしなくてもいいと気付くこともあるという。逆に言えば、人生に満足できないことがあると不妊がことさらに大きな苦悩につながることもあろう。

不妊の医療的事柄だけを話しているように見えても、背景には必ず人生への考えがある。カウンセラーがそう捉えるのは、「不妊はその人の一側面であり全部ではない」という確固たる観点からだ。不妊だからといって全てを否定されるのは理不尽だ。何年も体外受精などの治療を続け、継続するかどうかをじっくり話し合う中で、断念してほかの生き方を探す人も多い。養子を迎えるという選択肢もあり、そのためこのカウンセラーは養子縁組の情報提供ができるような対応もしている。

実際に特別養子縁組をした女性の体験談では、悩み抜いた末に迎えた“我が子”の育児に追われるのを喜びと語り、血のつながりなどよりも家族で楽しく過ごすことの幸せを訴える。この母親がこのように前向きに生きているのも、カウンセリングを通じて不妊という一点から人生全般に思いを致すことができたためだ。

こういう相談になるのは、話を聴く側が相手をありのまま受け入れ苦を共にする、寄り添う姿勢を持っているからだろう。幼少の頃に身に付いた信仰があるというこのカウンセラーは、自らもトラウマを抱えて生きてきたが、カウンセリングを通して多くの人の苦に寄り添う中で、自分も共に成長したと語る。

認知症の心の世界 拈華微笑の教えに学ぶ6月24日

認知症はかつて痴呆と呼ばれていた。2004年に厚生労働省はこれを認知症と言い換えることにした。今日では認知症の語はすっかり定着している。痴呆では、それ自体が差別的表現であ…

脱成長の時代へ 成熟の先に何を求めるか6月17日

ITやAI(人工知能)の登場で社会構造の変革が急速に進み、文明は第4次産業革命の段階に入ったと言われて久しい。一方で18世紀末の産業革命以来、成長の原動力となり、大国によ…

米「宗教の自由報告書」 中露など特定懸念国に警鐘6月15日

アメリカ国務省はこのほど2021年度版国際宗教の自由報告書を発表した。ブリンケン国務長官は2日のプレスリリースで「宗教の自由は、私たちの憲法の権利章典に記されている最初の…

神社本庁総長人事 田中氏の再任を決議も統理の指名なく未就任

ニュース6月24日
大きな顔が特徴の広島大仏と田中住職

広島大仏、67年ぶり里帰り 原爆忌平和法要控え 数奇な運命、奈良・極楽寺から

ニュース6月24日
何我寺本堂に立つ知花昌一氏。寺名にはウチナーグチ(沖縄方言)の「ぬーが」(これは何)と、「我なんぞするや」(私は何をなすか)の二つの意味を込めた

【連載】復帰50年、沖縄仏教はいま〈終〉 戦後の再出発 ― 土地は基地に、複雑な思い

ニュース6月24日
このエントリーをはてなブックマークに追加