PR
購読試読
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
お位牌Maker
PR
宗教文化講座 翠雲堂

「拡大自殺」の連鎖 孤立防ぐ取り組みが重要

2022年2月9日 12時18分

「拡大自殺」という概念が知られるようになった。世の中に何らかの恨みや攻撃的敵意を抱きながら、自死を図る際に周囲の人間あるいは無関係の他者を殺害して巻き添えにしようというもの。秋葉原無差別殺傷事件、京都アニメーション放火殺人事件をはじめ、最近では大阪・北新地クリニックの事件が典型的であり、埼玉の立てこもり医師射殺事件も容疑者の「死にたいと思った」との供述からそれに該当するとみられる。

それぞれの事情や理由のいかんにかかわらず、このように人の命を奪うのは絶対に許されないというのは当然のことであり、だからこそ「けしからん。嘆かわしい」と論評するだけでは対策や解決につながる方途は見えてこない。身勝手な暴挙の背景には貧困や社会からの脱落による極度の孤立がある場合が多いからだ。報道によると北新地事件で自らも死亡した容疑者は家族や仕事先などと絶縁し、収入もわずかで困窮したが生活保護申請も却下されていた。埼玉の容疑者は母親の介護で近所付き合いもほとんどなかった。

同クリニックに通院もしていた大阪の容疑者の両親の遺骨が事件直前に墓から持ち出された、また埼玉事件で人質になった医師に容疑者が死後30時間の母親の蘇生を求めた、などの報道からは彼らが尋常でない孤独感と絶望に追い込まれていたことが察せられる。

もちろん犯罪にまで至る事情はそれぞれに様々であり、勝手に類推して一般化することは逆に個々の事例への対応の妨げになる。また社会に注目される事件で、「自分も同じ事情だからしていいのだ」と“連鎖”を引き起こす危険性もあるので注意が不可欠だ。大学入学共通テスト会場の東京大前での無差別襲撃事件も先立つ事件の影響が見られそうだ。

新聞上で犯罪心理学者は「人は社会とのつながりが強いほど犯罪を思いとどまる」とし、自暴自棄で拡大自殺を図るケースには厳罰化は効果が期待できないという。自死問題に取り組む専門家は、自己責任が強調され過ぎて「助けて」と言いづらい社会が孤立を生んでおり、困っている人の悩みをまずは聴くことが大事だと強調する。

事件を「人ごとではない」と受け止める医療・看護従事者たちからは「怖い」ではなく、「もっと深く相手に接する姿勢を」との声が聞かれた。大阪で独居困窮者の世話や看取りも行っている僧侶は「コロナ禍で孤立、分断が加速しており、グリーフケアの重要性が高まっている」と訴える。宗教者にもなすべき事は多い。

僧侶の生老病死 寺院の外で迎える老後5月25日

生老病死は誰一人として避けて通れない道である。そこには僧侶も在家者も、老若男女の区別もない。老いが進み、病床に伏すようになれば施設や病院で人生の最期を迎えるのも僧俗に格別…

いのちを社会で育てる 内密出産と不妊治療5月20日

熊本市にあるカトリック系の慈恵病院で10代の女性が病院だけに身元を明かす「内密出産」で昨年末に子供を産んだ。国内初の事例であり、出生届を親の氏名が空欄のままで受理できるの…

戦争の愚かさ 時代遅れの悪質なプライド5月18日

ロシアによるウクライナ侵攻の報道で、兵器の値段が出てくることがある。驚かされるのはその高額なことと消耗の激しさだ。ロシアの戦車は1両1億数千万円、新型のものだと4億円以上…

本社神輿3基がそろって氏子地域を巡った

三社祭、活気再び 本社神輿3基、3年ぶり渡御 浅草神社

ニュース5月27日
消えずの火を点火する椋田委員長㊧と中村副委員長

大師「消えずの火」後世に 宮島弥山・大聖院で灯火台落慶 生誕1250年委

ニュース5月27日
室中の間の玉龍(第6龍)の前に座る細川氏㊨と松山住職

細川元首相、龍安寺に襖絵奉納 雲龍図40面のうち32面完成 開基・細川勝元550年遠諱記念

ニュース5月27日
このエントリーをはてなブックマークに追加