介護者カフェ 寺院ならではの役割
コロナ禍の影響による行動抑制などで、家庭内で要介護や認知症になる高齢者が増えているという。そんな中で家族ケアラー、肉親を介護する人の疲弊を軽減することを目指す「ケアラーズカフェ」「介護者カフェ」の役割が重みを増している。宗教界でも浄土宗は、首都圏をはじめとしてかなりの数の寺院で取り組みを進め、宗門の主導で新たにカフェを開催しようとする寺院へのノウハウ提供も盛んだ。
元々、社会の超高齢化で介護を要する人は増加の一途、それをケアする側も老老介護や多重介護、あるいは最近クローズアップされているヤングケアラーなど状況は深刻だ。そんな家族らを支える介護者カフェは、例えば大阪や京都でも新型コロナウイルスの感染防止対策を講じながら定期的に開かれている。高齢の親を介護中、あるいは今後その予定の人、介護されている人も対象になり、当事者同士の分かち合いの会で日常的な悩みを話し合って心身の安らぎにつなげるのが狙いだ。
参加者は「くたくたに疲れた」「もう限界」という苦悩や、普段の生活上の具体的な困り事を訴える。一方で「親を世話していたら、笑ってくれたのでほっとした」といった、報われたと感じた体験も披露される。運営するある住職は「ため込んでしまいがちな辛い思いを共有できるのが利点。介護には正解や完璧はなく、一人一人にできないことや分からないことがある。背伸びしなくてもいいと安心を感じ、カフェに集うことで介護体験がほかの方の役に立ち自信につながる」と言う。
浄土宗が出しているカフェ開催のガイドブックには、介護のプロセスが数カ月から10年以上に及ぶ場合がある状況を説明。「場」の提供と「傾聴」が寺院の役割で、費用もあまりかからないこと、行政や福祉専門家との連携が必要な点を解説した上で、事前準備から参加募集告知、開催当日の運営方法、振り返りまでの流れをフローチャートで詳しく提示している。
要諦は、仏教者がこの取り組みをすることの意義。介護には仏教の説く「苦」そのものが多く含まれ、「生老病死」の四苦は全てあるという。八苦の中でも、被介護者が亡くなれば「愛別離苦」が生じ、介護の負担から大切なはずの肉親を憎んでしまう「怨憎会苦」も含まれる。そして各寺の実施例の紹介で、カフェ参加者から「お寺という場だからこそ悩みを打ち明けられた」との声があったという報告は、地域における寺院の活動の在り方を考える上でも大きな示唆となろう。