戦争の愚かさ 時代遅れの悪質なプライド
ロシアによるウクライナ侵攻の報道で、兵器の値段が出てくることがある。驚かされるのはその高額なことと消耗の激しさだ。ロシアの戦車は1両1億数千万円、新型のものだと4億円以上だが、これまでに千両以上が破壊されたという。それだけで数千億円の損失である。ほかにも多くの戦闘機などが撃墜されているので、既に莫大な戦費を費やしたことが素人目にも分かる。対するウクライナ側はNATO加盟国からの支援を得ているとはいえ、こちらも多大な損失を蒙っている。
それ以前に絶対に忘れてはならないのは、無辜の一般市民に大勢の犠牲者が出ていることだ。そして兵士たちにも数多くの戦死者が出ている。搭乗した戦車の中で命を落とした兵士にもまた、その帰りを待ち望む家族がいたはずだ。市民であれ兵士であれ、どんな命もかけがえのないものである。失われた命はどれほど金を積んでも決して返ってくることはない。
兵器は殺戮と破壊のためだけに造られる。まして戦争が一旦起これば、人命の痛ましい喪失だけでなく財政の恐るべき浪費をもたらす。ロシアは21世紀に入って愚かな武力侵攻を行い、自国に対しても途方もない損失を引き起こしてしまった。この戦争を止める最大のキーパーソンは、プーチン大統領以外の何者でもない。戦争はどうしたって割に合わない愚行である。このことに気が付き、早急にウクライナ侵攻を停止してもらいたい。時すでに遅しの感はあるが、早急に矛先を収めないとロシアそのものの存亡にも関わりかねないだろう。
ここまで国民の犠牲を度外視する背景には頑ななナショナリズムがあり、それには国家や民族にまつわる根深い要因があるともいわれる。しかし、それは単なる悪質なプライドにすぎない。もしプーチン大統領が軍事侵攻に充てる莫大な金額を民生のために投入していれば、どれだけロシアは平和と繁栄を享受できたことだろう。そのような経済観念は子供にも分かる基本中の基本だ。この単純な理屈を、国家の最高指導者が理解できないことはないはずだ。
だが、プーチン大統領にこれを分からせるためには、世界の各方面からこれを臆せずに発信していく必要がある。またそのためには、発信する側も常に粘り強く説得を続ける姿勢が求められる。この姿勢を堅持できる存在がいるとすれば、それはまさに神仏を前にして幼な心を忘れない大人、すなわち宗教者ではないだろうか。引き続き世界の宗教者の働き掛けを期待したい。