ニュースを読む 宗教の基本知識が不可欠
ロシア正教会のキリル総主教がプーチン大統領支持の姿勢を示している。ロシアのウクライナ侵攻にはむろんのこと、このキリル総主教の姿勢にも、ロシア正教会内部から批判の声が出ている。
日本正教会はロシア正教会に属する自治教会だが、ロシアのウクライナ侵攻に対し、3月に「あらゆる暴力行為と破壊に反対」する声明を出した。日本のキリスト教徒の大半はカトリック教徒かプロテスタントである。オーソドクス(東方正教会)の信者はずっと少ない。それでも東京大主教区、東日本、西日本主教区の3教区があり、信者は1万人とされる。
日本ではキリスト教信者が合わせて1%程度と少数であるため、カトリックとプロテスタントの区別も定かでない人がいる。ましてオーソドクスとなると、その存在さえ知らない人が結構いる。
ロシアのウクライナ侵攻は、両国がオーソドクスの信者が大半を占める国で、関心を高める人が増えている。ただ正教会について適切に解説できる研究者はそう多くはない。こういう状況であるのに、生半可な知識からテレビなどで語る人を見受ける。視る側もほとんど知識がないため、それを鵜呑みにしかねない。
「ユーチューブ」に昨年12月に開設された「RIRCチャンネル」では、ウクライナ問題に絡めて現在のオーソドクスについて説明した動画がアップロードされた。タイトルは「ロシアのウクライナ侵攻を憂慮するキリスト教指導者たち~オーソドクスと国家のつながり~」。ロシア宗教研究者の井上まどか氏が、ウクライナ正教会とロシア正教会の込み入った関係を分かりやすく解説している。また日本の正教会がどのように位置付けられるかも分かる。ロシアでの宗教調査を踏まえた信頼度の高い内容である。
パレスチナ問題を理解しようとするなら、ユダヤ教やイスラム教の基礎知識は欠かせない。カシミール問題を理解しようとするなら、ヒンドゥー教とイスラム教の基礎知識が欠かせない。ウクライナ侵攻に宗教がどう関係しているかとなれば、オーソドクスについての基礎知識が欠かせない。その知識はマスメディア側だけでなく、視聴する側にも必要になる。
宗教に関わるニュースの信頼性を確認したいとき、どの情報源にアクセスするかを日頃から押さえておく努力が必要だが、その手段が豊富な時代である。テレビやネットの情報に、受け身の姿勢では惑わされるばかりである。適切な情報を探す訓練を日々重ねていきたい。