建学の精神 宗教系学部・学科の強化を
新型コロナウイルスのまん延防止等重点措置が多くの地方に適用される中、今年も宗教系大学の入試が行われた。2020年度に関しては一般に浪人回避の超安全志向、21年度は地元志向、大都市圏の私立大の志願者減なども指摘されたが、22年度はこうした傾向も踏まえた受験生の選択で、志望状況は大学によって明暗が分かれた。ともあれ、少子化の影響は決定的で、大学の生き残り競争は中長期的に厳しさを増すだろう。
宗教系大学でも学生募集が順調だったところもあれば、志願者数が前年実績に届かなかったところもある。気になるのは宗教・教学系の学部・学科の募集・入学状況。単年で大きな変動はなくとも、10年、20年という物差しで傾向を見てゆく必要もある。
宗教上の後継者養成という課題を抱えているのは宗教系独自の事情。建学の精神もまた宗教上の理念と深く結び付いている。宗教・教学の学部・学科が後継者育成や教学研究の活性化の機能を果たせるかどうかは、大学全体の経営と共に重要な問題だ。
国の教育体制の中に私学が位置付けられる道を開いたのは1899年の私立学校令で、同令適用の学校は徴兵猶予の特典も与えられた。しかし、宗教と教育の分離の原則に従って宗教教育が禁止されるため、同令ではなく1903年の専門学校令の認定を受けたところは多かったようだ。19年の新大学令施行後には宗教系私学も大学に昇格していったが、その際には文部省の意向で宗派名など宗教色が強い語は大学名から外された。
進学者増で宗教系大学の経営環境が大きく変わってゆくのは第2次世界大戦後である。多くが総合大学として発展し、後継者養成の学部・学科はその一部分になった。何千人もの学生を抱える大学の中で、存在感が相対的に薄れることは致し方ない。それでも宗教系学校としての建学の精神は、一般学生の宗教的薫育を重視して堅持されてきた。
国の高等教育政策に左右されながらも100年、150年の歴史を重ねてきた宗教系大学にとって、第一義的に重要なのは建学の精神に他ならない。そして現実に建学の精神を支える柱となるのが宗教系・教学系の学部・学科であり、教職員、学生である。この部分が劣化したとき、宗教系大学としての生命は衰弱の途をたどる。
大学経営の観点で志願者の増減に一喜一憂するのは当然だが、特に宗教系・教学系の学部を志願者にとって魅力あるものとするため、カリキュラムや教員人事の一層の工夫は忘れてはならない。