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宗教文化講座 翠雲堂

お墓参りの夏  「いのちの絆」を確かめる

2022年7月15日 10時04分

ポルトガルで日本料理のレストランを営むオーナーとシェフ、料理人たちが来日し、本場の日本料理を学ぶ様子を取材したテレビ番組があった。一行はポルトガルで日本料理を一から教わった日本人の料理人を師匠と慕い、その人が眠る故郷を訪れて墓参した。互いに抱き合い涙を流して追慕する姿をカメラは追った。

お墓は死者の記憶をとどめるメモリアルであり、残された者が在りし日を偲び、その人との出会いと交わりの縁を振り返る場所であることを映像は伝えていた。お墓参りは、亡き人と会話し、先祖とのつながりや、生と死の時間軸の上で結ばれた「いのちの絆」を確かめる習俗として生活の中に生きており、その感情は国や民族の壁を越えている。

葬儀の形が変わるのに伴い、埋葬の形も変わってきた。背景に家族の在り方そのものの大きな変化がある。死生学や生命倫理の分野に関わってきた曹洞宗僧侶の中野東禅氏は、問題の本質を「一言でいえば、家族形態の変化と人口移動に伝統的な家族の考え方がついていけなくなったということに尽きる」とし、「イエ共同体の意味が薄れ、それによって個人の心が浮遊し始め、人間の命の座標軸が曖昧化した。それが個人墓や集合墓、散骨の必要性になってきている」と分析する。

共同体意識の希薄化が個人化という名の現代人の孤立化につながっており、それが現代社会の様々な問題を引き起こす土壌となっているとも指摘される。そうした現実から考えるとき、お墓は亡き家族と個人とのつながりを確かめるしるべであり、先祖と私とが「いのちの共同体」としてひとつながりになっていることを確認する「心の落ち着きどころ」として位置付けることができる。

今夏、お盆の帰省ラッシュは戻ってくるだろうか。帰省の主な理由は故郷で家族や親戚らと久しぶりに再会し、お盆行事や墓参を通して先祖との絆を確かめるひとときを過ごすことにある。複数の意識調査では、新型コロナウイルスの影響による帰省自粛で墓参に減少傾向は見られるものの、墓参への関心や回数が大きく低下したという結果にはまだなっていない。

お墓を介した家族共同体の再生について、寺院から積極的に働き掛ける機会がもっとあってもいい。住職は、寺院墓地や納骨堂に遺骨を祀っている遺族、檀家や信徒が墓参に訪れる機会を捉えて、ここが亡き家族、さらには先祖と今生きている私たちとが「いのちの絆」を確かめ合う場所であることを語ってほしい。

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