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宗教文化講座 翠雲堂

循環に生きる 「断捨離」から再生へ

2022年8月3日 10時51分

最近は洋服や着物のリメイク、家具類の修復再生、古民家のリフォーム(修繕)やリノベーション(包括的な改修)といった日常生活に身近なところでの「再使用(リユース)」「再生利用(リサイクル)」の話題が増えてきた。廃棄ゴミを再資源化する技術開発も進んでおり、循環型社会実現への取り組みの多様化がうかがえる。

「断捨離」ブームの時代に『捨てない生きかた』という本を上梓した作家の五木寛之氏は「ぼくはこれまで一貫してモノを捨てないという生き方を続けてきました」と言い、捨てられない理由を「戦中戦後の物資が乏しい時代を生きてきた人間の切ない後遺症なのかもしれません」と語っている。

生活空間に蓄積された様々なモノは、それ自体が生きてきた証しに他ならず、五木氏の言う通り人生の記憶を呼び起こす「依り代」の役目を果たすものだろう。五木氏はまた、鎌倉新仏教を興した法然や親鸞が唱えた「摂取不捨」の信仰に着目し、天災や飢饉が重なり、疫病が蔓延した地獄のような時代に光明をもたらした阿弥陀仏の本願念仏を「誰一人として捨てない仏教」として捉えている。

一方、ヨガの行法に基づくとされる「断捨離」の考え方は、大量生産・大量消費の時代に、欲望に任せてお金やモノを手に入れ、所有し、ひたすら消費してきたことへの反省から、モノへの執着を断ち切り、不要なものを捨て、身を軽くして生きることを提案するものであり、そこには明確な現代的メッセージが含まれている。それは、生から死へ向かう時間軸の上で、自ら蓄えたたくさんのモノを生きているうちに始末するという問題への身の処し方を考えさせ、意識の転換を促した。

人生の終末をどう迎えるかは、我が身にとって切実な課題である。だからこそ、縁のある人たちの意識の中に自分がどんな形で記憶されるかということとは別に、人生を自ら後片付けすることには主体的な意味がある。問題は、捨てることがモノを粗末にすることに通じないかという点にある。日本人は戦後の経済成長のさなかにも「もったいない」の気持ちを大切にしてきた。その精神をおろそかにすることはできない。

循環型社会の形成は、あなた任せでは進まない。一人一人が意識を持ち、自覚的に取り組むことで初めて「もったいない」と「断捨離」、捨てない生き方と捨てる生き方を調和させる道が開かれる。そうなれば「断捨離」からリユース、リサイクルの循環によって再生と新たな価値をもたらすことに期待できるだろう。

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