築地本願寺の経営学…安永雄彦著

近年、積極的な組織改革や新規事業で着実に成果を上げている築地本願寺。その立役者となった安永雄彦宗務長が、2015年の着任以来取り組んできた組織づくりのノウハウや、寺院が生き残るための戦略観を初めて一冊にまとめた。
当時、同寺は約2億円の赤字を計上。危機的な財政の中で、著者と現場の職員には温度差があったという。「400年もなんとかなったのだから大丈夫」「寺はビジネスじゃない」と反発する僧侶たちに、著者が「築地本願寺でも今変わらなければ潰れる」と訴え、同寺の改革が始まった。
立ち上げた事業は、インフォメーションセンターや合同墓の運営、会員制クラブやサテライトテンプルなど実に多彩。さらに顧客管理や人事制度の改善にも着手している。大胆な組織改革のプロセスも盛り込み、グローバルビジネスの第一線で活躍した著者のエッセンスを学べる。
目新しい事業に目が行きがちだが、根底には「新たな時代にこそ仏教が必要である」という信念がある。大規模災害や新型コロナウイルスの影響で人々が人生に不安を覚える昨今、寺院がいかに多くの人に価値を提供できるか。寺院自体の収入も減少する中、現場の人々の問いにヒントを与えてくれる。
本体価格1600円、東洋経済新報社(電話03・6386・1040)刊。