鈴木大拙 禅を超えて…山田奨治、ジョン・ブリーン編

海外にZENを伝えた鈴木大拙は今年が生誕150年。国内外で大拙の再評価が進む。本書は海外研究者の論考を中心に編集された。大拙の業績を時代的文脈の中に位置付け、包括的な評価を行う試みである。
国際日本文化研究センターの山田奨治教授とジョン・ブリーン教授の共編。序論「生誕150年 いま読み直す大拙」、第1部「世紀の転換期の大拙」、第2部・第3部「戦間期の大拙」、第4部「戦後の大拙」の構成で、大拙の思想の変遷をたどる。
巻頭の末木文美士氏の「大拙をどう読むか?」は彼の思想を西洋と東洋を対置し、日本と禅を美化する「仏教モダニズム」で、オリエンタリズムとも共鳴することを示唆。
初期の大拙に関しては、「大乗版プロテスタント仏教」を企てたとするマーク・L・ブラム氏の論などを第1部に収める。『禅と戦争』の著者ブライアン・ヴィクトリア氏は「鈴木大拙はナチス支持者だったか?」(第2部)で戦時下の思想的責任を問い、自著がナチスに歓迎されることを承知していた日和見主義者と糾弾する。
国内の研究とは異なる様々な視点の論考は、大拙の多面性とそこに一貫するものを照らし出し、今後の大拙研究を一層豊かなものとするだろう。
本体価格7500円、思文閣出版(電話075・533・6860)刊。