仏教思想の展開 日蓮仏教とその展開…花野充道博士古稀記念論文集刊行会編

日蓮教学研究で知られる花野充道氏が古希を迎え、記念論文集が編まれた。800ページを超す大部の2巻。日蓮教学、宗史、仏教学など国内外の学者による53本の論文が収められ、最先端の研究を知ることができる。
花野氏は1950年、京都府生まれ。11歳の時、日蓮正宗総本山大石寺で出家。早稲田大大学院で博士課程を修了した。住職の傍ら学術大会等で積極的に研究成果を発表。宗会議員も務めたが、2009年に僧籍を返上した。同年に法華仏教研究会を発足し研究誌『法華仏教研究』の刊行を続けている。
本論文集に収められるのは、渡邊寶陽・立正大特別栄誉教授「日蓮聖人の法華経救済のイメージと『大曼荼羅』図顕」、末木文美士・東京大名誉教授「鳳潭と性悪説」、ジャクリーン・ストーン・米プリンストン大教授「近世不受不施論争における権力に対する譲歩と殉教」など。専攻、宗派、世代を超え幅広く論考が寄せられている。
花野氏自身も約300ページの大作「日蓮教学の思想史学的探究」を執筆。「日蓮仏教の本質を一言で言えば『安国を実現するために立正の戦いをする』」と記すなど、宗祖讃仰が目的の「宗学」でなく、客観的かつ主体的に日蓮聖人の考えを把握しようとする「思想史学者」としての姿勢が示される。
本体価格3万円、山喜房佛書林(電話03・3811・5361)刊。