お葬式の言葉と風習 柳田國男『葬送習俗語彙』の絵解き事典…高橋繁行著

日本人は弔いの中で死や死者に対してどう向き合ってきたか。著者は1990年代から30年近く、近畿圏を中心に昔の葬式の聞き取り調査を行ってきた。弔いの言葉は隠語が多く難解にも思えるが、柳田國男『葬送習俗語彙』(1937年)から選んだ用語に約180点の切り絵を付けて絵解きした。
家族、親戚や同じ集落の人たちが、亡くなった人を弔った土葬などの風習を数多く紹介。「極楽縄」の項では、石川県の昔の納棺作法が描かれる。1メートルほどの木綿を死者の膝から首へかけて棺に入れ、それからぐっと絞めつける。頸骨が音を立てて砕けることもあるという。「残酷にさえ見える」納棺作法は、座棺が狭いからでもあるが、「死者をがんじがらめに縛るのは、まだ荒々しい死霊を閉じ込めるため」と著者は指摘する。
死者の出た家の火を「死に火」といって葬家でたばこの火を使うと忌負けしてけがをするとか、野焼き場を指す「ネフタ」では木製の座棺を燃やしたときに死者が踊っているように見える、など死を恐れる気持ちに加えてユーモラスな側面も丁寧に取り上げている。
特に、墓場まで行列を組んで故人を送る「野辺送り」の説明は圧巻。行列を詳細に描いた切り絵を見れば、消えつつある葬送儀礼に懐かしさを感じる人もいるかもしれない。
本体価格1800円、創元社(電話06・6231・9010)刊。