ここにしかない原典最新研究による 本当の仏教 第4巻…鈴木隆泰著

僧侶向けの実務誌『月刊住職』の連載「最新版仏教文化基礎講座」25本分を加筆・編集した単行本の最新第4巻。連載版に「初めての人に仏教を説くために」という副題が付されているように、初学者にとっても納得できる分かりやすい構成になっている。
本巻ではジャイナ教と仏教の教義の違い、「老い」や「愛」に対する釈尊の教誡を各論的に解説する。後半は釈迦族の滅亡や、愚鈍とされた周梨槃特(チューダパンタカ)が悟りに至るまでの対機説法を分析。いずれも事実を筋道立てて記述しており、理解を助ける。
特に、釈迦族を滅ぼしたとされるヴィルーダカ王と釈尊の問答の筆致は出色。古代インドの厳然としたカースト制度によって屈辱を受け、高貴な釈迦族への復讐を決意したヴィルーダカ王のドラマを非常にやさしく描いている。それによって身分や血統に頓着しない釈尊の聖性が一層浮かび上がり、「対機説法」や「行為主義」といった仏教の本質がストンとふに落ちてくる。
ほかにも「仏教という宗教が差別の少ない国や人々に受け入れられたわけ」「布施はなぜ最も重要な教えなのか」などの見出しが興味を引く。どの章から読み始めても教義の本質にたどり着ける好著。
本体価格2400円、興山舎(電話03・5402・6601)刊。