法話のきほん…伊東恵深著

タイトルの通り「法話とは何か」「法話の原稿はどのように作るか」「法話をする際に気をつけることは何か」など、法話に関する「最も基本的なこと」をまとめた。著名な僧侶の法話集などは多いが、初学者を対象にした参考書がほとんどないため、著者は本書の執筆を決意したという。
理念・準備・実践の3篇で構成。理念篇では「話し手が仏法に出遇った事実や感動、ときには苦悩や悲哀を、〈具体的に〉話すこと」の大切さなどを提示し、準備篇では三段構成(序破急)・四段構成(起承転結)・五段構成(讃題・法説・譬喩・因縁・結勧)の法話の展開方法や法話の分量・時間配分の目安、参考例などを紹介した。実践篇では身なりの整え方や発声の音量、法話終了後の反省と改善の心得などを説明している。
著者が所属する真宗大谷派は教団の近代化に伴い布教使制度を廃止したため、法話を実践的に学ぶ場が他派よりも少ないとされる。ただ、近年は門徒から「法話力」が問われ、宗派も僧侶養成で法話実習の充実を推進する方針を打ち出しており、本書はそうした流れもある程度踏まえている。大谷派では「法話はハウツーや技術ではない」という気風が強いが、そうした“反技術主義”への問題提起を読み取ることも可能かもしれない。
本体価格1300円、法藏館(電話075・343・5656)刊。