新宗教を問う -近代日本人と救いの信仰…島薗進著

日本ほど新宗教が大きな力を持つ国は世界に類例がないという。政党と結び付き、選挙の時は大きな力を発揮する創価学会や、多くの青年を惑わせ、地下鉄サリン事件を引き起こしたオウム真理教など、新宗教はなぜ日本でこれほど影響力を持つのか、また近代に大発展した新宗教はなぜ現代において衰退しつつあるのか、さらに救いの信仰に向けられた人々の心はどこへ向かっているのか。本書はこれら三つの問いへの考察を通して、日本の近代とは何かについて考える。
本書ではまず、新宗教の歴史を第1期から第4期に分け、新宗教の最盛期だった第3期に大教団になった創価学会、霊友会、立正佼成会等や第2期の大本などに焦点を当て、これらの新宗教の諸特徴を描き出していく。
後半では江戸時代から明治期の新宗教(第1期)が発生してくる基盤について、江戸時代に発展した民俗宗教や修養運動などに触れ、その流れの中で黒住教、天理教、金光教、本門佛立講などを取り上げる。
最後に、オウム真理教と幸福の科学など第4期の新宗教について述べるとともに、新宗教ではない、新宗教を引き継ぐような宗教性やスピリチュアリティーの動向に言及し、救済宗教が担ってきた精神文化がどのように形を変えていくのかを見定めようとしている。
本体価格940円、筑摩書房(電話03・5687・2601)刊。