コロナを越えて 慈しみの中に光を…佐野俊也編者

新型コロナウイルスの感染が拡大し、多くの人が不安な日々を過ごしている。このような時、僧侶は何を考え、どのように民衆と向き合うのか――。曹洞宗を代表する7人の布教師がそれぞれの言葉で、コロナ時代をどう生きるべきか、そのヒントをつづっている。
執筆した布教師は関水俊道、三部義道、渡邊祥文、髙梨尚之、木村髙寛、澤英俊、渡邊宣昭の各氏。関水氏は坐禅会の参加者に「坐禅は不要不急なのでしょうか」と尋ねられ絶句したエピソードを紹介し、「現実を正しく理解し智慧をもって賢く生きるため、僧侶が必要至急の役割を発信すべき」と説く。福島市の渡邊祥文氏は原発事故後に受けた差別を明らかにし、「私たちには怖れ忌避する心が内在している。自分可愛さが露出し他を抑圧・排除し、差別的言動に付和雷同する」「不安や苦悩が頂点のときこそ寄り添い伴走する人が求められる」と僧侶の役割を見いだす。
本書を企画した佐野俊也・法光寺住職は、これからの時代を生きる際のキーワードが「慈悲=慈しみの心」だと指摘。「いのちの継承の中で『人は必ず死ぬ。それを自覚して自己のいのちと他のいのちを共に大切にして生きる』。そのような想いの中にこそ、人と人との真の出逢いが生まれ、光輝く瞬間が生まれる筈だ」との信念を記している。
本体価格800円、心力舎(電話03・5440・5514)刊。