ジーザス・イン・ディズニーランド ポストモダンの宗教、消費主義、テクノロジー…デイヴィッド・ライアン著、大畑凜、小泉空、芳賀達彦、渡辺翔平訳

タイトルを直訳すると「ディズニーランドのイエス」。様々な有名キャラクターや映画を送り出したディズニーは、世界で大きな影響力を持つエンターテインメント産業に成長した。世俗社会の象徴というべきディズニーランドで1999年、キリスト教系の教団が大規模イベントを行った。人々の霊性はもはや宗教施設だけでなくテーマパークでも発現するのではないか。監視社会論で知られる著者の異色作を4人の若手研究者が翻訳した。
宗教と世俗社会は、度々対立する概念として扱われる。一方で近代化によって高度に発展した消費社会は、宗教自体にも新たな可能性をもたらしてきた。コロナ禍でさらに普及した寺院のホームページや「オンライン伝道」もそれに当たるだろう。現代の世俗社会において、今までにない形で宗教的な営みがなされていることを本書は特に指摘する。
原書の発表からはすでに20年が経過している。その間、世界ではインターネットによる情報化が席巻し、気候変動や対テロ戦争など人々の宗教観に大きな影響を与える事件が相次いでおり、宗教を取り巻く価値観は当時とは大きく変化している。それでも、世俗社会で新たに萌芽する宗教性に対して「理解が求められる」と述べる著者の言葉に耳を傾けるべきだろう。
本体価格3500円、新教出版社(電話03・3260・6148)刊。