いづも財団叢書7 出雲の祭りと地域文化…いづも財団・出雲大社御遷宮奉賛会編

島根県内の神事・祭礼をテーマにした2018年度のいづも財団公開講座の記録。
同財団事務局長の山﨑裕二氏は、1598年の「北島国造家年中行事覚書」を基に国造家の行事食を分析する。
中世の出雲大社では千家国造家と北島国造家が月交代で奉仕していた。北島家の年賀儀礼では両家支配の領民へは酒だけだが、北島領の領民には豆腐の吸い物、酒、埦飯茶碗が出され、重臣と同格の扱いだった。埦飯は椀に盛り付けた姫飯(現代の普通のごはん)に副食物を添えて盃酒を加えたもので、配下の社人に出すことも多かった。
1月20日に大社に来る天台宗鰐淵寺の僧へは家中一族総出で接遇し大宴会が開かれた。「三献」の酒の合間に七膳が出されるなど、同じ僧でも年始客よりはるかに丁重な接待であり、両者の密接な関係が分かる。
その他、各行事に様々な食事が出されており、史料抜粋を眺めるだけでも面白い。
また万九千神社の錦田剛志宮司は、神職の立場から神人共食の意義を説き、今の出雲地方では一般社会でも「なおらい」が懇親会・慰労会を意味すると紹介する。
古伝新嘗祭、日御碕の和布刈神事、出雲の神楽、祭り花、ホーランエンヤに関する論考もある。
本体価格1500円、今井出版(電話0859・28・5551)刊。