東日本大震災 3.11 生と死のはざまで…金田諦應著

「慈悲は厳しい言葉。切に他を想う心は、同じ力で自分に帰ってくる。他を想えば想うほど、どうにもならない現実がそこにあるのだ」。東日本大震災の被災者に寄り添い続ける著者はこう語る。
震災直後から仮設住宅等で始めた傾聴喫茶「カフェ・デ・モンク」の活動や被災者との出会いなどを克明につづる。
津波で子どもを亡くした母親、父親を亡くした小学生、復興住宅で自死した友人など、様々な苦しみが被災地にはあふれる。傾聴する人たちはその苦しみをそのまま受け止め、被災者自身がやがて踏み出す一歩を温かく見守っている。
著者は宮城県の曹洞宗僧侶であり、震災後に医療者や牧師、東北大関係者らと共に「心の相談室」の立ち上げに協力。カフェも緩やかに連携し、緩和ケアに宗教を取り入れた「臨床宗教師」養成にも尽力した。
「あとがきに代えて」では原発事故についても触れる。「原発が未完成で危うい技術であることを認めなければならない。そして、『品格と良識』をもって『フクシマ』から突き付けられた問いに、向き合い続けなければならない。そういう問いを背負いながら、生と死のはざまを歩き続けるのが私たちの責務なのだ」としている。
本体価格1800円、春秋社(電話03・3255・9611)刊。